九州国際大学 国際関係学部 准教授 男澤 智治氏
四方を海に囲まれた日本では古来より港が交易上非常に重要な役割を担ってきた。特にアジア諸国との緊密な関係が求められる昨今、港湾機能は益々需要が高まってきている。今回は国際物流論が専門で九州国際大学国際関係学部・准教授の男澤智治氏に地理的にアジア諸国に近い博多港の将来像を語って頂いた。
―SSEのメリットをお聞きしましたが、逆に現状での問題点・課題点はないのでしょうか。
男澤 SSEが就航してからまだ時間の経過が浅いので、課題はあります。韓国ではコンテナを運ぶシャーシを取り替えずにそのまま輸送可能です。しかし、日本や中国ではそれがまだ出来ていませんから、取替えの手間がかかります。個別にはそれが出来ている企業もあるようですけど。その点はよりスムーズにするために、これからの課題となっています。共通ナンバープレートを導入するなど、解決策はあるはずです。行政側も巻き込んでの交渉でいずれは改善されるのではないかと希望を持っています。
また自由貿易協定(FTA)が変化を促すと思います。経済的には自由貿易の促進拡大で、スケールメリットや、協定国間における投資の拡大効果が期待できます。さらに地域間における競争促進で国内経済の活性化や、地域全体での効率的な産業の再配置が行なわれ、生産性向上のメリットも期待されます。
一方でFTAはデメリットもあります。協定推進の立場の国や人々は、地域間における生産や開発の自由競争や合理化を前提にしていることが多いため、自国に立地の優位性がない場合、相手国に産業や生産拠点が移転する可能性があります。このため、国内で競争力があまり強くない産業や生産品目が打撃を受けたり、国内消費者が求める生産品の品質にも影響を及ぼす可能性が存在します。
つまるところ、時代に合わせたロジスティック戦略をすることが最も肝要ということです。具体例を挙げれば、JRが使用しているコンテナは「12フィートコンテナ」と呼ばれており、これはISO規格ではありません。そのため、通関上は「容器」として扱われます。12フィートコンテナは小口で運べるメリットはありますが、中国では小口の需要は高くないのです。
(つづく)
【新田 祐介】
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