工事入札疑惑に揺れる福岡県八女市に、さらなる重大問題が浮上した。
20日、新たに判明したのは、談合情報を受けて実施されたと思われていた業者からの事情聴取が、実際には行われておらず、業者側から「誓約書」のみを受け取っていたというもの。事情聴取をやったと見せかける「偽装」と考えられる。
市町村会館本体と隣接する中央公民館の工事については、それぞれ「交流センター1」と「交流センター2」として分割発注される予定で、今年2月に入札が実施された。
しかし、「交流センター1」の入札が成立しなかったことから、関連工事である「交流センター2」についての入札を中止していた。疑惑が指摘されていたのは「交流センター1」の入札についてで、入札に参加することを申し込んだ中堅ゼネコンと地場の業者による8JV(建設共同企業体)のうち7JVが入札を辞退。1JVが予定価格をはるかに上回る金額で応札し、「不落」となっていた。
入札の約1カ月前である1月19日、八女市役所に対し電話による談合情報が寄せられ、情報提供者から「交流センター1」「交流センター2」について、落札する業者名を指摘された。八女市は、これを受けて「交流センター1」の入札に参加を予定していた業者(JV)に対する事情聴取を実施、業者側に「誓約書」を提出させていた。データ・マックス取材班が八女市への情報公開請求で入手した文書を調べたところ、「交流センター1」については「談合通報に伴う事情聴取について」とする決済文書と業者宛の事情聴取の通知文書、聴取内容を記した「事情聴取書」、前述の「誓約書」などが存在するが、「交流センター2」については「誓約書」のみであることが判明。八女市に対し、事情聴取が行われていないのではないか、と確認を求めたところ、20日午後、八女市が事実関係を認めた。事情聴取はなかったのである。
八女市側は、担当課長が病気のため不在としたうえで「談合情報にあった地場の2社については、組み合わせが違ったため、聴取の必要がないと判断したのではないか。『誓約書』を取ったのは『念のため』ではないか」とするが、「誓約書」は事情聴取の結果を受けて提出されるものである。市側の言い分は通用しない。さらに談合情報で指摘された地場の2社は、それぞれ別の地場業者とJVを組んでいたが、入札に参加する予定であったことは事実である。2社の名前が具体的に告げられた以上、同工事の入札についても談合の有無を確認するのは当然であり、それは市長の責任である。
しかし、今回のケースは、誓約書だけ提出させ、あたかも事情聴取を実施したかのように見せかけた「聴取偽装」に他ならない。その証拠はまだある。八女市に提出された地場業者の「誓約書」を見ると、八女市総務課からFAXで送付した用紙であることが確認される。わざわざ市役所側が所定の様式をFAXで送付し、業者のうち3社は、受けたFAXをそのまま使用しているのである(資料2参照)。八女市は、事情聴取を怠った挙げ句、形だけの誓約書を集めたのである。地場業者への便宜供与としか考えられない。
市民オンブズマン福岡の児島研二代表幹事は、「『偽装』と言われても仕方がないでしょう。『誓約書』は、談合の疑いを受けての事情聴取の結果に責任を持たせるためのもの。談合はなかったという証拠もないまま、『誓約書』だけを出させることはあり得ない」と話している。
市町村会館の工事入札疑惑は、さらに拡大。八女市長の対応に注目が集まる。
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