時代が進むにつれて生活様式が変わり、日本の歴史的伝統工芸の一つである仏壇は出荷額が大きく落ち込んでいる。ピーク時は平成2年で出荷額は1,295億円と言われているが、近年ではその半分以下まで落ち込んでいるという。平成に入ってからは、製造コストが上がったことで人件費を削減するために、国内のメーカーはこぞって中国に拠点を置き、最近までは国内流通量の約7割が中国産と言われていた。
しかし、最近は事情が変わってきているようで、業界関係者によると、昨年9月に北京オリンピック開催後、中国では人件費が高騰し、今までの金額では採算が合わなくなり、拠点を置いていたメーカーが撤退を強いられているという。「現在は中国国内で生産するよりも、ベトナムやインドネシア、カンボジアなどで作るほうが格安なので、拠点が移りつつあります。今ではなんと5倍近くも人件費が違うそうですよ」というのは業界の関係者。かつて仏壇の製造は韓国国内での製造が大半を占めていた時期もあったが、ソウルオリンピックが行なわれた1988年以降、人件費が高騰した事で、中国に拠点を移した経緯がある。日本は超高齢化社会に突入した事で、今後、仏壇類の需要が極端に減少することは考えられない。「生活スタイルの変化に加えて、大きな仏壇の製造をしなくなり、現在は小型化で安価なものが増えてきています。出荷数は増えても出荷額は減るでしょうね」(前出の業界関係者)。
中国の経済力が向上しているが故の出来事ではあるが、今後、ベトナム、インドネシアなどの東南アジア諸国がめまぐるしい経済発展を遂げた場合、一体、日本はどこで仏壇を製造するのだろうか。
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