利益の積み重ねこそが企業存続の源泉
株式会社北洋建設 代表取締役会長 脇山章治氏
<マンション請負を忌避>
(株)北洋建設の先代(脇山会長の実父)時代は、年商15~18億円台に推移していた。当時は地味な目立たない建設会社であった。ただ「電電公社(現在のNTT)には強い」という印象は残している。脇山会長が2代目社長に就任して注目されるようになった。無借金で100億円企業までに上り詰めたことには、業界は唖然とした。この100億円の中味が卓越している。金額が張るマンション分譲の請負が皆無、ゼロなのだ。
受注を伸ばした福岡の建設業者の共通点は、マンション分譲・賃貸一棟売りに依存していることだ。高松組の倒産の要因は、過度なこの部門への傾倒である。脇山会長は、15年前にマンション分譲を巡る社内論議を徹底していった。結論は否である。「あまりにもリスクの負担が大きすぎる。これはビジネスではない」という見解だ。それ以降、マンションを受注しないことを社是とした。徹底論議の成果もあった。中古市場を予測してマンション改修工事のセクションを設置したことだ。それから15年経過し、どの業者もこの改修市場に参入している。同社の強みの一つは、この先取性・戦略性だ。
<確実に利益を得る>
高松組の安値受注には幾度か辛酸を舐めさせられた。北洋建設は原価管理に関し人一倍うるさい。同業者の追随を許さないプライドを持っている。その同社が単価で高松組に負ける。不思議でたまらない。研究・分析して到達したことは「高松組は採算割れをしている」ことであった。「出血サービスすれば、いずれ潰れることは自明の理。各現場での微量の利益の積み上げこそが、事業存続の要」と脇山会長は指摘する。裏を返すと、早い段階から高松組の破綻の予測をしていたということになる。共通の取引業者の情報も入手できる。「高松との競争入札は敬遠しよう」と社内暗黙了解事項になった。
北洋建設の決算の現場数は、福岡で1番数が多いのではないか。極端なことを言えば、毎日、1件の現場を施主に引き渡している勘定になる。工事内容は一戸建てのリフォームから戸建受注、改修工事、新築RC工事と多岐にわたる。「お客を無数に確保することこそが危機回避の原則。そして、各現場で確実に利益をどう捻出していくかを工夫・検討する」そうだ。この姿勢が戦略性に富んだ組織を構築するのであろう。
利益を捻り出すにはまず、コンピュータを駆使した現場管理の徹底だ。現場要員の動きまで無駄のない管理システムを導入している。工事現場を工場現場に置き換えようとする試みが伺える。『現場こそが利益の宝庫』という信念に裏付けられている。猫も杓子も「改修工事!!」を叫んでいる昨今だ。だがパイオニアの強みを発揮して、この分野では同社は先手先手を打ってきた。コスト削減の企業努力には時間と金を投入した。内省化100%を目指す挑戦もしていると耳にする。異分野の技術者も定期採用している。
北洋建設の勝利の方程式は(1)同業他社にない自社の独自性を明確化する (2)戦略性に富む (3)人材スカウト・人材育成 (4)現場での利益管理の4点に要約される。
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