今月27 日より、改正建築士法が全面施行される。これにより、一定規模以上の建物の構造設計には、国家資格である「構造設計一級建築士」の関与が義務付けられることになる。これは、構造設計において5年以上の実務経験を有する一級建築士のうち、定められた講習と考査を修了した者に付与されるもの。構造設計および法適合において高度な技術的水準が要求される。
しかし、改正建築基準法が運用面で大きな問題と混乱を残したのと同様、改正建築士法にも大きな問題が潜んでいると思われる。とくに現役の建築士から批判が集中したのが、日本建築構造技術者協会(JSCA)が独自に認定する「建築構造士」の有資格者に対して考査の一部を免除したことだ。
JSCAの会員=構造設計で問題を起こさない、というわけではなかろう。同じ人間である以上、思わぬミスをすることもあれば、意図的に計算書を操作することも十分にあり得る。ここに不公平感が生じているのだ。
もうひとつの問題が、構造設計の実務を担う有資格者の少なさが予想されること。建築技術教育普及センターは4月30日、2008年度の構造設計一級建築士講習に伴う修了考査の結果を発表した。それによれば、有資格者は全国で7,762人だが、その多くが都市圏に集中しており地域偏在が目立つ。また、有資格者のなかには行政や民間審査機関、ゼネコンなどに所属している人が多く、民間の構造設計実務者は相当少ないと見られている。
一般の設計でも法適合のチェックが義務付けられることで、現在構造設計に携わっている多くの人が場外に去ることになる。建設不況に見舞われているとはいえ、将来的に構造設計一級建築士が不足するであろうことは想像に難くない。そうしたなか、どうすれば改正建築基準法の二の舞にならないようにできるだろうか。
▼共同組合 建築構造調査機構
http://www.asio.jp/
~つづく~
【大根田康介】
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