社員の満足が顧客の満足に 新生する城山観光ホテル
会社は「公器」である
―地場企業はほとんどオーナーでトップダウン経営が多いと思います。そういう意味で、代替わりは難しいですね。
伊牟田 当社も昔は100%オーナー企業でしたが、いまはそうではありません。誰が経営していくかは、当社くらいの規模になりますと、基本的にはリーダーシップなり人を引っぱっていく能力が無いとダメだと思います。非常に良い技術、製品を持っているベンチャー企業であっても、社員が10名、50名、100名、500名と増えてくると、マネジメントできない人が出てきます。
会社の規模拡大に合わせたマネジメントをするというのは、技術とは別の能力が必要です。創業して家内工業的にしているあいだは良かったけれども、規模が大きくなると社員も増えて地域社会との関わりも深くなります。そうなると、必ずしも創業者のままが良いとは限りません。
アメリカでは、たとえば技術をもった人にはチーフテクニカルオフィサー、経営能力がある人にはチーフエグゼクティブオフィサーというかたちにします。そうして役割分担を明確にし、スムースに経営している会社を、アメリカのシリコンバレーでベンチャー投資業務をやってたくさん見てきました。
―では、社長の経営理念は。
伊牟田 経営理念としては、会社をつくった以上、たとえオーナーが100%株を持っていようと「公器」だということです。社会、世間との関わりは創業時点ですでに始まっているわけですから、会社は公的機関だと認識しなければなりません。そのうえで、従業員とその家族、取引先などに対して責任があるということです。経営者になった以上、私利私欲は排除すべきで、公正・公平な行動が必要です。一番権力があるのは社長ですから、ここが暴走したらどうしようもありません。
当社ぐらいの規模の会社が本当に倒産してしまったら、何千人という従業員やその家族が路頭に迷う可能性があるわけです。500~600社の取引先も困るでしょう。
―仕事柄、倒産をたくさん見てきましたが、社長が会社を私物化したままのところは長続きしません。
伊牟田 もちろん、場面によっては社長個人の才覚や器が試されますから、プレッシャーもありますし自分なりに勉強もします。ただ、当社は私ひとりの力だけでは経営はできません。周りの人の意見も聞く必要があります。
~つづく~
【大根田康介】
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