構造設計一級建築士の問題は、人手不足のほかにもまだある。たとえ資格を有していたとしても、若手が多い=経験を積んできた年配経験者が少ないという点だ。
要するに今回の試験は受験勉強のようなもので、経験に裏打ちされた「知恵」ではなく、テキストや講習などから得た「知識」の方がを優先されたのが現実。とくに全科目を受験した建築士からは、「あんな試験は普段使わない知識も含まれており、通るはずがない」「何の意味があるのか」といった声が非常に多い。
また、構造設計一級建築士の関与が義務付けられた以上、もし書類に不備があり工期が遅れるようなことがあれば、その建築士がすべて責任を負わなければならない。これについては、ある一定数の構造設計と確認申請の経験がなければ難しいだろう。そう考えると、「知恵」を持つ年配経験者の方が有利と思われる。
仲盛氏は「構造設計一級建築士は個人格の印を押すことになる。要するに責任が個人にかかるという点で、資格を有していたとしても捺印を実行できる度胸がある人はなかなかいないだろう。私はこれまで数多くの構造設計を経験してきたし、行政との戦いのなかで確認申請がスムーズにいく知恵もついた。この力を生かして、多くの困っている方々を助けたい」と語る。
実際に地方の建設会社に今回のことについて話してみたところ、「当社も大変困っておりました。そうした方がいれば、ぜひご紹介ください」というご意見をいただいた。需要があるのに供給がないという現状は、とくに地方において濃厚だと思われる。
設備設計一級建築士の方も同様の問題を有しているだろうが、ともかくも改正法はすでに走り出した。改正建築士法が改正建築基準法の二の舞いにならないよう、有資格者を確保できていないところは早急な対応が求められている。
▼共同組合 建築構造調査機構
http://www.asio.jp/
~終わり~
【大根田康介】
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