(社)博多港振興協会 会長 角川敏行氏
博多港に関わりのある運輸や倉庫、商社、船社など229社で構成される(社)博多港振興協会は、国や市に対する港の整備の要望活動や国内外でのポートセールス活動を通じ、博多港の振興と発展に大きな役割を果たしてきた。アジアでは巨大港湾の整備が進み、港湾間競争も激化。そうした中、博多港がこれからどのような方向を目指すべきか。角川敏行会長に話をうかがった。
C2バースの供用で活動に弾み
――ポートセールスのポイントは?
角川 博多港でさまざまな整備が進められてきた結果、アクセス面や港の規模、使い勝手のよさ、手続きの迅速化など、荷主さんや船社の側からみて随分と“使いやすい港”になってきたと思います。そこで「九州から神戸や大阪に運んで中国向けの船などに積んだり、中国などから着いた貨物を神戸や大阪に降ろして九州まで陸送するのであれば、近くにある博多港を使ってください」とアピールしています。
――港の規模や使いやすさという点では昨年10月、アイランドシティのコンテナターミナルに水深15mのバースが部分供用開始されましたね。
角川 アイランドシティにはすでに水深14mのC1バースが稼動していましたが、供用開始されてすぐにオーバーフローしてしまいました。そこでコンテナターミナルの整備を急いでいただけるよう国に陳情し、部分供用開始されたのが水深15mのC2バースというわけです。これで博多港もコンテナ数にして年間で100万TEUが扱える規模になりました。このことはポートセールスを行なう上で大きなセールスポイントだと思っています。
釜山・上海との共生が現実的
――ハード面だけでなく、通関や出入国管理、検疫に要するリードタイムの短縮もポイントだという指摘があります。
角川 その通りです。港にとってベーシックなCIQ(税関・Customs、出入国管理・Immigration、検疫・Quarantine)の機能がスムーズでなければ、とても“使いやすい港”とはいえません。かつては、土曜日の午後や日曜日はCIQを行なっていませんでした。しかし、行政サイドの協力もあり、今は随分と改善されてきました。ただ、将来的には、東アジアの巨大ハブ港のように1年365日、24時間CIQのサービスができる体制づくりとローコスト化を図る必要性があると思います。
――国内のほかの港にはない、博多港ならではの強みとは?
角川 博多港は日本の西に位置し、アジアのテリトリーの一部を占めています。海を挟んで釜山があり、中国には青島、鹿児島と同緯度に上海もあります。そうした中、博多港もハブ機能をもつことができれば理想的なのですが、現実的にはむずかしい。そこで、博多港は中継港としてのハブ港ではなく、物流のハブ港を目指した方がいいと思っています。そうすれば、東アジアに近いという地の利を活かすことができます。すでに、釜山とはフェリーで結ばれ、上海との間には高速貨物船のRORO船が就航しています。
また、博多港に荷揚げされた貨物を列車輸送専用の小型コンテナのゴトコン(注:5tコンテナの略)に入れ替えたり、最初からゴトコンで上海からもってくるといったサービスもあります。国土交通省は2004年に東京、名古屋、大阪をスーパー中枢港湾に指定し、アジアの巨大港湾に対抗しうる港湾機能の整備を進めています。しかし、博多港は釜山や上海などと競い合うのではなく、共生する方向で進んでいくのが現実的。将来的には海路と鉄道を結ぶ「シー&レール」で、大連や青島で荷揚げされた貨物が鉄道で中国内陸部に運ばれるような時代になるでしょう。そうなれば一層、博多港のロケーションが際立つのではないでしょうか。(つづく)