博多港開発(株) 代表取締役社長 酒井 勇三郎氏
福岡市の都市力がまだ、脆弱だった約50年前、行政だけでは困難な港湾整備に民間の力を活用しようと福岡初の第3セクター、全国的にも先駆けとなる株式会社方式の港湾整備会社として設立。以後、博多港開発(株)は須崎ふ頭の埋立事業を皮切りに、港湾整備事業を通じて福岡の都市力アップに貢献してきた。その港湾開発事業のこれまでと現状、さらに今後の課題を踏まえ、同社が果たしてきた役割、今後に期待されることなどについて、酒井勇三郎社長に語っていただいた。
日本海航路での優位性
―具体的には?
酒井 JR貨物や内航船との連携強化がありますが、やはり、アイランドシティへの都市高速道の延伸でしょう。これはこども病院や青果市場のためだけでなく、アイランドシティや香椎のコンテナヤードなどから九州自動車道にもっていくためにはぜひとも必要なことだと思います。
――財政が限られている中、厳しい見方も予測されます。
酒井 そこで改めて強調しておかなければならないのは、港湾整備というものは単年度の財政で考えるのではなく、産業の振興や雇用創出という観点に立って10年、20年といった長期的なスパンでとらえる必要があるのではないか、ということです。単年度ごとの財政事情が厳しいという理由で新たな産業づくりにつながる先行投資を抑制してしまえば、この街の産業はやがて疲弊していく。そうなれば、税収自体が悪化してしまい、福岡の将来に明るい展望を描くことはできません。
――東アジアとの連携の中で、福岡の将来に明るい展望を描くために必要な戦略は?
酒井 博多港が今からどんなに港湾整備に勤しもうとも、もはや上海や釜山と肩を並べることはできないでしょう。それは彼我の国家戦略の違いもさることながら、港湾規模の違いやコストの面で上海や釜山が圧倒的に優位な立場にあるからです。そうした中、博多港が目指しているのは、釜山や上海などの間でいかにシャトル化を進めていくか、ということです。上海や釜山から日本海を通り、津軽海峡を通過してアリューシャンから北米に入るという日本海航路は、東アジアと北米大陸を結ぶ上で最も効率のよいルートになっています。そこで、西日本の北米向け貨物を博多港に呼び寄せ、北米向け船舶を博多港に寄港させ、また、東アジア向けの貨物も博多港に集中させ、上海や釜山などとの連携を図ることで存在意義を発揮していくべきでしょう。
――そのために必要なことは?
酒井 博多港が日本海航路の拠点となるためには、博多港の優位性を国内外に広くアピールしていくことが重要です。博多港のポートセールスについては、博多港振興協会が中心となって行なっていますが、より強力に推進していく必要があると思っています。もちろん、博多港の発展とともに歩んできた当社としても、そうした活動には積極的に関っていくつもりです。(了)