◆「6・29」鳩山邦夫の乱は起きるか
麻生首相にとって世襲批判以上に頭が痛いのが、日本郵政の社長人事をめぐる党内抗争だ。
こちらの“主役”は首相の盟友の鳩山邦夫・総務相。「かんぽの宿」売却問題追及の先頭に立ってきた鳩山氏は、郵政の一連の不祥事の責任を取らせるかたちで日本郵政社長の西川善文氏(元三井住友銀行頭取)を6月の任期で退任させようとした。
だが、西川氏は小泉氏が首相時代に郵政民営化の推進役として“三顧の礼”で招いた人物。それだけに自民党内の民営化派は猛反発し、有力財界人をメンバーとする同社の「指名委員会」も西川続投を答申した。
これに対して監督官庁大臣の意向を無視された鳩山氏が、
「政界、財界から批判されても、一人になっても戦う」
と、なおも“クビ切り宣言”をしたから、抜き差しならない状況になってきたのだ。
実は、麻生首相も最初は鳩山大臣の西川更迭方針を支持していたとされる。麻生氏は野田聖子氏や小渕優子氏を入閣させ、山口俊一氏を首相補佐官に起用するなど、郵政造反組を手厚く遇してきたし、本人も今年初めに「本当は郵政民営化に反対だった」と本音を漏らしたほどだったが、その姿勢を貫くことができなかった。
「麻生さんは小泉元首相から“西川のクビを切るのはまかりならん”と強烈なプレッシャーをかけられている。西川氏を強引に更迭できないことはないが、そんなことをすれば小泉側近の武部勤氏や中川秀直氏ら反主流派に“麻生おろし”の絶好の口実を与えてしまう。総選挙前に党内をかき回されたくないから、鳩山大臣には涙をのんでもらって西川続投させる方向に傾いている」(麻生派議員)。
打算もある。麻生首相や鳩山氏が造反組優遇と民営化推進派叩きをしてきたのは、民営化を機に自民党から離反した「最強の集票マシン」といわれる旧全国特定郵便局長会(全特)と関係を修復しようとの狙いがあった。全特側は次の選挙は民主党を応援する方針を決めており、このままでは自民党の大きな脅威になる。
ところが、狙いは空振りに終わった。全特は、かんぽの宿追及程度では民主支援の方針を変えなかった。
麻生首相にすれば、リスクを冒して西川社長を更迭したところで得るものがないわけである。
鳩山氏は梯子を外されて窮地に陥った。ここで西川氏の続投に“はいそうですか”と従えば面目を失うばかりか、これまでの郵政民営化利権の追及はパフォーマンスだったという批判を浴びる。
日本郵政の社長人事は、株主総会(6月29日)での決定の後、総務大臣の承認が必要だ。100%株主の政府(麻生首相)が西川氏の続投を決定し、鳩山大臣がそれを蹴っ飛ばせば閣内不一致で政局になるし、鳩山氏が不承不承認めても、今度はかんぽの宿など民営化疑惑に怒っている国民が、日本郵政の経営責任さえ問うことができない麻生首相のだらしなさに黙っていないだろう。
総選挙を目前にして、麻生政権はボロボロになっていく。