福岡市が進めるこども病院人工島移転に暗雲が漂いはじめた。予定された病院PFIの事業内容を大幅に見直すという。市が計画してきたPFI事業は、大手ゼネコンを中心とすることを想定したもので、対象業務は以下のとおり幅の広いものとなる。
・総括マネジメント
・開院準備支援
・什器備品調達保守管理
・物流管理
・医療関連(消毒・滅菌、給食、洗濯・ベッド管理、医療事務)
・顧客サービス(総合案内・電話交換、利便施設運営)
・施設整備(設計・建築・工事管理)
・施設管理(建築物保守管理、整備保守管理、清掃・衛生管理、保安警備)
大手ゼネコンが中核となってPFI事業を受託する場合、多岐に渡る委託業務を遂行するために、多くの企業と組む必要が生じる。建設工事は一発勝負で終わるが、PFI 事業者となればそれだけでは済まないということだ。病院を利用する「患者」が少なければ、「赤字」部門が出てくることは明らか。儲からない事業が出てきたからといって「辞めます」というわけにはいかない。特に中核となるゼネコンの負担は大きくなる。PFI事業の見直しは、そうした点に配慮せざるを得なくなったということである。先行き不透明な時代に、リスクを背負うことを避けたいのは企業としては当然の心理である。ましてや、20年もの長期にわたる契約となればなおさらだ。ゼネコンとしては「建設工事請負」だけでサヨナラしたいというのが本音だろう。このままではPFI事業者として手を挙げるところがないという現実が透けて見える。
吉田宏市長が次の定例会見でどのような説明をするのか楽しみだが、事業内容を削減することで、これまで消極的だったゼネコンまで目の色を変えてくることは明らかだ。PFI事業の見直しを、誰がどのような理由で命じたのか。はっきりさせる必要がある。懸命に職務を行なっている職員が多いのは事実で、一部の恣意的な判断で唐突に方針が変わるようでは、市役所内部の「憂鬱」はますます広がってしまう。
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