新型インフルエンザの国内への広がりが懸念される中、東京の医療機関では、発熱外来の診察を拒否したケースが100件近くにものぼるとされる。医療とは何かが問われる事態に、厚生労働省は6日、各都道府県に異例の事務連絡を出した。
「(発熱相談センターの指導に従った発熱外来には)感染予防に必要な指導を行った上で、当該医療機関が診察すること」。つまり、医療機関に「診察」を要請しているのだ。
各自治体には発熱相談センターが設けられ、新型インフルエンザまん延国への渡航歴や患者との接触がある発熱患者は、まず同センターに相談し、その後発熱外来を置く医療機関で受診する流れとなっている。しかし、医療機関によっては警戒するあまり、一般の発熱患者に対してまで診察を拒否するケースが相次いだのである。厚労省は実態調査に乗り出すとともに、発熱センターからの指示を受けた患者については、「診察」することを指導したが、受診を拒否された患者にとっては「はい、そうですか」で済まされる問題ではない。困っている患者の診察を拒否するとはもってのほか、との声があがるのは当然だろう。
国が医療機関に対し、「診察しなさい」と要請することは異常事態としかいいようがない。
緊急事態であるからこそ、失われつつある「医の倫理」が問われているのだ。