民主党の新代表に鳩山由紀夫氏が就任した。大手マスコミの論調はといえば、小沢前代表の辞任を煽った挙げ句、今度は「小沢氏が説明責任を果たさなければ、有権者の理解は得られない」とするものばかりである。「小沢の傀儡」「二重権力」を強調するメディアも少なくない。止まない小沢氏への攻撃は、何を意味しているのだろう。
小沢氏の秘書に対する政治資金規正法違反容疑については、公判で事実関係が明らかにされるべきで、それ以外の場所で小沢氏に説明を求めるには難しい点がある。逮捕・起訴された小沢氏の秘書は、容疑を否認していることから、初公判までは保釈どころか「接見禁止」、つまり弁護士以外の人間には会うこともできない。手紙など外部との通信も禁じられる。小沢氏自身が、逮捕された会計責任者から直接話を聞けない以上、詳細な説明など無理というものだ。「いや、小沢も知っていたに違いない」という意見もあるだろうが、しょせん憶測に過ぎない。大手マスコミによる「小沢たたき」には、小沢氏の政治的影響力を削ごうとの狙いが透けて見える。検察の意を汲んだものか、あるいは形を変えた自己防衛だろう。
無責任に検察リークを垂れ流し、代表辞任に追い込んだ大手マスコミが怖いのは、小沢氏側による反撃だ。小沢氏の手腕を高く評価している鳩山代表が総理大臣に就任したら、国策捜査を行なって政治を混乱させた検察組織に手をつけることも予想される。もちろん小沢氏が黙っているとは思えない。総選挙を前に野党第一党の党首を狙い撃ちしたうえ、政権政党である自民党側への捜査を積極的に行った形跡もみとめられない。一時的ながら麻生政権の支持率を上向かせ、民主党への期待感が著しく低下したのは事実である。このままだと、事件勃発後の漆間官房副長官による「自民党側へは捜査は及ばない」との発言は本当だったことになる。民主党は政治的に動いた検察を許すことはないだろうし、徹底的に説明を求めるだろう。
大手マスコミに対しても厳しい姿勢で臨むことも予想される。事実、鳩山代表は就任会見で、フリージャーナリストの質問に対し「民主党が政権を取ったら記者会見をオープンにする」と、記者クラブ制度を否定するかのような発言をおこなった。大手マスコミへのけん制と受け取ることもできるだろう。あらゆる「既得権益」を敵とみなす野党側にしてみれば、大手マスコミの「記者クラブ制」による情報支配もその対象である。知る権利を盾に公金で記者クラブを維持している上、公的機関の情報を独占することで命脈を保ってきた大手マスコミは小沢氏と民主党の逆襲に対し、戦々恐々だろう。
検察・大手マスコミ、ともに総選挙の行方が気になり始めている。