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政界インサイドレポート

岡田VS鳩山の「エースなき」民主党代表戦の裏側
政界インサイドレポート
2009年5月13日 14:14

 民主党代表戦は、岡田克也・副代表と鳩山由紀夫・幹事長の事実上の一騎打ちとなる公算が強まっている。
「人気の岡田」に対して数に勝る「鳩山ー小沢院政」連合という構図に受け止められているが、どちらが代表になっても、政権を賭けて自民党とまともに渡り合える手腕があるとは思えない。
 長く政権を担ってきた自民党は簡単に看板を架け替えてきたが、初めての政権交代に挑む民主党の次の代表には、総選挙の勝利だけではなく、その後に起こる各党入り乱れての連立の駆け引きをまとめあげ、さらに総理大臣として行政を担う能力が求められる。
 それができる人物がいないから、この党は結局、小沢氏自作自演の”辞任劇”に振り回されている。

◆党内抗争に向けられた小沢の”破壊力”
 そもそも小沢一郎・民主党代表の電撃辞任は麻生自民党に反転攻勢をかけるための”戦略的判断”とはとても言いがたい。
「政治的な責任で身を引くわけでもありません」
 辞任会見でそう断言し、西松建設事件について「1点のやましいところもない」と強調したのが、不本意な辞任だったことを証明している。
 自分が代表のままでは総選挙に勝てないという現実を認めざるを得なくなったにしても、小沢氏はそれを”身から出たさび”とは全く考えていない。あくまでも党内の反小沢議員やマスコミの”辞任圧力”によって、党の結束力が乱れ、それが選挙にマイナスだという認識なのだ。
 勢い、報復は党内に向けられる。
 小沢一郎という政治家は昔から党内抗争となると無類の戦闘力を発揮する。
 民主党では小沢氏に距離を置く前原グループ、野田佳彦グループ、菅直人グループなどが岡田氏擁立に傾いているのに対して、小沢氏は盟友の鳩山由紀夫・幹事長を後継代表に据えようと電撃辞任からわずか1日で「16日の両院議員総会で選出」という後継代表選出の手続きを決定した。
「小沢は自分を批判した連中が担ぐ岡田におめおめと代表の座を渡すつもりはない。小沢と鳩山の党内勢力は参院の7割、衆院の5割を押さえており、2人が組めば数で負けない。だから、一緒に辞任するといっていた鳩山を”あんたがやるならオレは身を引く”と説得した。鳩山後継には小沢院政という批判が必ず起こるから、それも計算に入れて短期決戦のスケジュールを組んだ。連休中にそこまで布石を打ったうえで反小沢派に不意打ちをかけるように電撃辞任した」(鳩山グループ議員)
 本来、そうした政略は麻生自民党を相手に発揮するのが野党党首の務めのはずだ。
 ただし、民主党で小沢・鳩山連合が数で優位に立っているのは、小沢氏得意の「党内引き締め」の結果ではない。
 鳩山VS岡田の争いとなれば世論調査では岡田氏の人気が優るが、実は、民主党内で岡田氏の手腕への評価は意外に低い。
 岡田代表時代の側近議員がはっきりこういう。
「岡田氏はクリーンかもしれないが、天下分け目のいくさを指揮する戦略眼がない。郵政選挙の際も、小泉首相が解散したとき岡田代表は『自民党が分裂した中での選挙になるので歓迎したい』と選挙戦終盤まで政権を取れるつもりでいた。郵政民営化への賛否も揺れ続けたし、民主党大敗のA級戦犯なのに今回も自分が代表なら勝てると勘違いしている」
 岡田氏はその後、郵政選挙で落選した候補の地元に応援に回ったことが”美談”になっているが、それも「地域の祭りには出ない、街頭演説もいやだ、オレが行くんだから演説会をセットして何人集めろと注文が多すぎる」(落選中の候補者)と、決して喜ばれているわけではないのだ。
 ”選挙巧者”という点では、応援に入れば地元業界や労組の票をきっちりまとめる小沢氏とは雲泥の差がある。
 しかも、小沢氏は代表時代の3年間で、前原前代表時代に関係が悪化していた連合との結びつきを強めて民主党の支持基盤を強化し、国民新党、社民党、新党大地など右から左まで野党との信頼関係を築いてきた。そうした老獪な政治手腕は余人には真似できない。
 それだけに、民主党内には、総選挙後にも小沢氏の手腕を期待する声が未だ根強い。
「総選挙で単独過半数を取るのは最初から容易ではない。第一党になって連立政権をつくるのが現実的な目標だが、他の野党との交渉や場合によっては自民党の一角を切り崩すためは小沢さんの力がまだまだ必要だ。原理主義者で妥協を嫌がる岡田さんにそうした手腕を望むのは無理。ここは鳩山体制で小沢さんには裏方に回って支えてもらうのが一番現実的な選択だろう」
 役員の1人はそう本音を語る。
 小沢氏はかつて大連立騒動の際、いみじくも「民主党は未だ様々な面で力量が不足している」と語ったが、依然として政権奪取という権力闘争を戦える指導者が”手負い”の小沢氏しかいないのもこの党の現実なのだ。

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