世界の先端ロボット開発拠点の仕掛け人
(株)テムザック 高本社長に聞く設立の経緯
九州・福岡の地に、世界の先端研究機関が集まった「ベーダ国際ロボット開発センター」が5月25日に発足した。九州の将来の基幹産業として期待されるロボット産業の離陸ために、従来の発想と異なる全く新しい組織を作り上げた(株)テムザックの高本陽一社長に設立の経緯と今後の構想を聞いた。
――「ベーダ国際ロボット開発センター」設立の経緯をお聞かせください。
高本 昨年からの世界的不況で、どの産業も早く突破口を見出そうと苦労されていると思います。逆にこの数年、期待されてきながら伸び悩んでいたロボット産業ですが、時代をブレイクスルーする可能性があるとして、昨年からさらに大きな注目を浴びています。
テムザックは2000年の設立以来、実用ロボットの研究・開発に取り組み、国内外の大学や研究機関と共同でさまざまな新しいロボットと技術を開発してまいりました。しかし、収益の上がる産業としてまだ離陸できていない知能型・サービスロボット市場で、これまでと同じやり方で単独で商品開発を進めていくには限界があると感じていました。
日本はこれまで、知能型ロボットの研究で世界でもトップの実力を誇ってきました。しかし、ヨーロッパやアジア各国も国家戦略として実用ロボットの開発に政府資金を投入して、一気に競争力を高めようとしてきています。
隣の韓国では昨年、「ロボット特別法」が制定され、国が財政面や研究開発をバックアップする制度ができ上がり、ロボット産業ブームと言える状況にまできています。
ヨーロッパでは、デンマークやノルウェーなどが福祉分野のロボット開発に多額の予算措置を行なっています。
アメリカは軍事分野が先行していましたが、オバマ政権になり、平和分野へのロボット開発が加速されるようになってきました。
こうした世界の流れのなか、「テムザックとして、どう戦っていくのか」と、この数年悩み続け、いっしょに研究を進めてきた大学の先生方や九州の財界の方々と議論を重ね、構想を練ってきたわけです。そこで、救急救命ロボットをいっしょに開発した九州大学医学部の橋爪先生や、世界でもトップのロボット研究家である早稲田大学の高西先生と共同で、医療・福祉分野でのロボット実用化のための研究組織を作ろうということになったのです。さらに、この構想をこれまでロボット研究でともに苦労してきた京都大学、九州工業大学、金沢工業大学などの先生方やソニーのアイボを開発したシステムバイオロジー機構の北野代表、ドイツのフラウンホーファーIAISのクリスタラー先生、イタリアの聖アンナ大学のダリオ先生などにも呼びかけたところ、皆さんも大変乗り気になっていただき、九州のこの自然豊かな玄海町で、いっしょに実用ロボットの開発を進めようということになったのです。
また、福岡県庁や九州の財界の方々も、将来の道州制を見越した九州独自の基幹産業としてロボット産業の成長を期待され、「べーダ国際ロボット開発センター」の設立を積極的に支援しようと機運が盛り上がり、おかげさまで今年4月に社団法人としての登記を終え、5月25日に開所式を迎えることができました。
(つづく)
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