不動産流動化事業は、土地を仕入れ、物件を開発し、不動産投資家へ売却するというスキームのため、安く仕入れて高く売るほど利益が出る。当然、購入者にもメリットが必要なため、開発案件の利回りが最低でも4~5%は必要だ。
ところが、世界的な金融ショックの影響から不動産価格は軒並み下落している。こうなると、不動産流動化事業は頓挫してしまうのだ。
土地の価格が上がっているときは成り立つビジネスだが、下落・横這いのときはよほどの付加価値をつけないと難しいのだ。昨年破綻した福岡のデベロッパーが所有していた天神の不動産。購入時は坪600~700万円だったが、今では200万円を割り込むような状況であり、ビジネスとして成り立たないのは当然だ。
ジョイント・グループが開発していた商業施設「aune(あうね)」のように、郊外の土地を安く購入し、開発してテナントを誘致して売却する。あるいは保有する手段は残されているともいえる。しかし、イオンですらテナント誘致に苦戦して、店舗のオープンを見直す状況のなかで有力テナントを引っ張ってくることは困難であり、逆にお荷物になりかねない状況にある。
購入して、開発して転売するまでには、小さな物件でも2年は掛かる。経済が右肩上がりで、土地価格も上昇しているときなら充分ビジネスとして成り立つのだが、1年以上前に購入した物件であれば上がっているところなどは、ほとんどなく、流動化しようにもできないのが実情だ。
不動産の流動化事業によって急成長を遂げた新興不動産業者が相次いで破綻するのも、それらの企業が拠り所としていたビジネスが崩壊したからにほかならない。
(つづく)
【石崎 浩一郎】
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