研究者たちが集中でき、実験に最適な規模を誇る環境
テーマは「ロボット技術」と「医療」の専門家とのコラボ
「国際的な研究者が集まるロボット開発拠点として、期待に応える成果を上げたい!」と意気込む㈱テムザックの高本社長に、宗像市のこの場所を選ぶに至った経緯などを聞いた。
――宗像市の旧玄海町役場を研究・開発拠点とした発想はユニークですね。
高本 宗像市さんとは、2005年に当社の2足歩行ロボット「キヨモリ」が、宗像大社でロボットとして世界で初めて安全祈願をした時からお付き合いがあり、市町村合併で空き地となった玄海町役場跡地を利用しないかと、ずっと熱心に企業誘致をいただいておりました。
ロボットの研究開発には、実証実験を含めかなりの敷地が必要となりますが、玄海町役場跡地は1万坪もあって、災害救助用ロボットなど屋外でいろいろな条件で試すことができるようになるので、実用化に大きな成果が上がると期待しています。
今回の研究所設立には、宗像市さんだけではなく、この土地を所有し、ドクターヘリの基地として活用されている医療法人池友会さんにも大変お世話になり、この場でもお礼を申し上げたいと思います。
交通の便からいうと、北九州市や福岡市の方が絶対的に便利なわけですが、自然豊かで静かな環境の方がロボット研究者には向いていると考えています。特にドイツのクリスタラー先生やイタリアのダリオ先生は、きれいな海と美しい緑に囲まれたこの場所を気に入っていただき、長期で研究のために滞在したいと言っていただいています。
――福岡県に海外でも最高レベルのロボット研究者が集まったというのは、すごいことですね。
高本 ダリオ先生はEUのロボット開発予算に影響力を持つ大御所ですが、日本での共同研究にとても期待されています。
早稲田の高西先生をはじめとした他の先生方も、ロボット研究では素晴しい実績をお持ちの方ばかりで、この研究センターが優れていると思うのは、九大医学部の橋爪先生に参加いただいたことだと思います。
本当に実用化されるこれからのロボットは、作る側の技術だけで成り立つものではありません。使う側の問題点をよく理解した上で、現場での臨床実験、実証実験を経て、初めて現実社会に受け入れられるものだと考えています。そういう意味で医療現場からの問題提起をいただき、ロボットに何を期待するのか、何ができるのかを検討しながら開発テーマを絞り込み、さらに臨床実験でいっしょにデータを採り技術にフィードバックしていける仕組みは、他ではできないことだと思っています。
「人間のまね」ではなく、「人間にできないこと」「人間にとって大変なこと」を手助けしていく、そういうことができるロボットを、特に医療・介護の分野でロボット技術の研究家と医療の専門家が意見を交わしながら実用化を進めていくことが、ベーダセンターでの一番のテーマだと思っています。
(つづく)
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