開発用地を購入して、開発計画を練り、賃貸料収入による利回りを計算して、転売を進めていく不動産流動化事業だが、今までは計画段階で転売先が決まるなど、予定段階で進んでいた。ところが、不動産市況の不振による入居率の低下や地下の下落に伴う評価損、賃料の低下など、計画通りに進まなくなってきた。
計画では、利回り7%だったのが蓋を開けると、満室でも5%にしかならないとか、満室どころか、入居率が半分にも満たないなどという物件も聞かれるようになった。
こうなると、購入先の投資家達も慎重になるのは当然のこと。今では、「買ってもいいけど条件がある。計画通り入居したら買う」とか「計画の80%以上にならないと買わない」ということが起こり始めている。
1年ほど前までは「あの物件はもう売れている」「買い手は付いているんだよ」という声が聞かれたデベロッパー。だが今では、入居率が80%を超えればという条件で手が上っている」「利回りを考えると販売価格を下げるしかない。この物件ではマイナスが出る」「開発案件は持っているが、計画を進めようにも、買い手もない。完成したら話に乗るということだが、そのためには入居率も確保しなければいけない」という状況になっている。
金融機関も、おいそれと建築資金までは貸さない。かといって、デベロッパーが開発資金まで出せる余裕はない。結果的に開発することが出来なくなり、不動産流動化ビジネスはなくなってしまうことになる。
机上の計画で事業を組み立てられる時代は終り、投資家は実際の数字や現状でのやり取りを求める時代に変わってきている。
(了)
【石崎 浩一郎】
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