さまざまな分野にまたがるロボット産業の裾野の広さ
ベーダセンターを九州の経済活性化の引き金に
ベーダ国際ロボット開発センターの設立に伴い、北九州を離れ宗像市に本拠地を移転した㈱テムザック。最終回は、地域との関わり方や連携などの展開について高本社長に聞いた。
――宗像市へ本拠地を移し、今後、テムザック自体としては、どのような事業展開や地域展開を考えているのでしょうか。
高本 テムザック自体は20名足らずの組織ですので、分散して事業を行なうことは難しく、ベーダセンター設立に併せて宗像に移ることを決めました。しかし、北九州市さんとは、特に消防局さんとは災害救助ロボットの開発で大変お世話になってきましたし、今後もこの分野での共同研究は進めていきたいと思っています。
今回のベーダセンター設立と当社の移転で大変お世話になった宗像市さんとは、地域産業活性化や雇用開発を含めて地元に早く役立てるように、ベーダセンターと当社の事業がうまく進むよう、密にご相談させていただこうと考えています。5月25日の開所式では、地元の保育園の子どもたちにも、当社が各大学いっしょに開発したロボットのデモを見て楽しんでいただきました。ベーダセンターの敷地は、もともと医療法人池友会さんのドクターヘリの基地でもありますので、ロボットとドクターヘリを見ていただくという地域観光・産業観光のポイントとしても地元にお役に立てると思っています。
ベーダセンターでは、大学研究室からの常駐者はまだほとんどいないのですが、今後海外からの研究者を含めて、多くの有能な方々の交流が増えていくと思いますし、ロボット研究を志す多くの方々が福岡や宗像に住み、ベーダセンターで研究し、テムザックで働きたい!と思っていただけるまでに発展できればと期待しています。
福岡市さんとは、「ロボット特区」の指定以来、路上実験などで大変なご協力いただいていますが、アジアのゲートウェイとして「ロボットに出会える街・ふくおか」の実現のために、街中でロボットが使われ、動き回っていく事業構想を具体的に詰めていければと思っています。
ロボットは、機械・電気・制御・IT・センサー・バッテリー・生命工学・部品素材・人工知能など、本当に多くの分野にまたがった最新技術の統合ででき上がっています。九州・福岡には、その基盤となる技術を持った企業や大学が多く集まっています。
世界経済は出口の見えない不況で低迷していますが、九州は地域として将来の道州制を踏まえて、独自の競争力のあるロボット産業への投資・育成をしていけば、世界でも注目される元気な地域になれると思います。しかも、ロボット産業の裾野は広く、市場規模も巨大ですので、地域経済に対する波及効果は大きいでしょう。ベーダセンターの設立がそのきっかけになれば幸いですし、テムザックとしてもロボットが産業として自立していければ、永年の夢が九州のこの地で開くだろうと期待しています。
ベーダセンターの行方は、企業や行政をはじめ地元九州の皆さんのご支援にかかる部分が大変大きいと思っています。ぜひ、多くの皆さんに医療・介護・生活支援ロボット開発への前向きなご支援と、特に地元企業の方々には具体的なロボット事業への取り組みのご検討をお願い申し上げたいと思います。
(了)
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