八女市町村会館の工事をめぐる疑惑の裏には、八女市のデタラメともいえる杜撰な市政執行があった。これまで八女市に対し情報公開請求して入手した文書からは、政策決定過程の不透明さが浮き彫りとなっている。
最大の疑問は、野田国義前市長時代に決定した「リファイン案」を、1回の入札「不落」であっさりと捨て去り、「新築」へと方針転換したことである。八女市は、新築の方が安く上がると説明しているが、その根拠は極めて薄弱なのだ。
2月の工事入札で建設共同企業体(JV)を組んだ業者側は「予定価格が安すぎる」として辞退(7JV)もしくは予定価格をはるかに上回る金額で応札(1JV)。結果、入札は成立せず、これが新築への転換点となった。この時点で山下設計による設計そのものに問題がなかったのかを検証すべきだが、公文書で確認する限り、八女市にはそうした動きがなかった。本来なら、耐震判定をパスした設計図書の問題点を、第3者である別のコンサルや専門業者に確認すべきだろう。じつは、データマックスが専門家に確認したところ、耐震判定にパスした設計には重大な問題があることが判明した。この点については、改めて報じていくことになる。
ただ、八女市の「新築のほうが安い」とする根拠は、あくまでも耐震判定にパスした設計図書による積算との比較にあるため、設計自体の適否は当然行なわれなければならない。この作業を怠って「新築」と比べるのが間違いなのである。「はじめに新築ありき」との指摘が出るのは、こうした手順を省き、入札日当日から「新築」にまい進したからである。
八女市の政策決定過程には重大な瑕疵がある。第一に、山下設計に対し「新築案」について検討を指示した時点の文書がないことである。公文書がないということは、八女市側が全て口頭で山下設計に指示を出したことになる。誰の決済に基づいて支出負担をともなうような業務の指示が出されたのか不明ということは、明らかに行政のミスである。
さらにいい加減なのは「新築に変更する」と決めたときの決済文書がないことである。いつ、だれが、どのような理由で「新築」に変更すべきだと判断したのかの証拠がないのだ。
山下設計への業務委託、そして新築案への変更と、重要な局面での決済文書がないということは、住民監査請求には耐えられないということになる。税金の適正な支出という観点からも、ゆるがせにできない問題なのだ。
(つづく)
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