自民党はバラマキ予算だけで総選挙を戦うつもりらしい。
7日、自民党は麻生首相が河村官房長官や細田幹事長と協議、本格的に総選挙向けのマニフェスト作りに動き出した。しかし、「やるやる」といっていた世襲制限について事実上の断念をしたかと思ったら、減反政策の見直しもマニフェストには盛り込まないのだという。麻生首相が言い出した厚生労働省の分割・再編もいつの間にか立ち消えになった。もちろん、企業団体献金の禁止など露ほども考えていないのだろうから、有権者が求める政治の変化には何一つ応えないことになる。
問題なのは、どの事案についても「やるやる」というそぶりを見せながら、結局は見送り、骨抜きにしてしまう自民党の体質である。役人の「検討します」は「やりません」と同義であると言われてきたが、「やる」と言って実行できない自民党はそれ以下ということになる。特に世襲制限については、取りまとめ役の武部勤改革実行本部長が「次の選挙からやる。小泉首相の次男は無所属で立つのでは」と直前まで言い切っていたのである。わずか1日か2日で前言を撤回し、「公募で選ばれたら世襲もOK」とふざけた内容で終わってしまった。
石破農相が提唱してきた減反政策見直しにしても、生産調整(減反)で高い水準の米価維持を図る現在の農政そのものを考え直すいい機会だったはず。減反に参加する農家だけに所得補償し、結果的に米価を下げようとする石破農相の考え方は間違ってはいない。米価が下がれば農家が苦しくなるとする農林族の抵抗で見送りとなったようだが、これではいつまでたっても足腰の強い農業は実現できない。
減反で荒廃した農地は一朝一夕では元に戻らない。近年、全国で失われつつある「棚田」の再生に取り組む人々の姿が報じられるようになったが、減反こそが日本の原風景を喪失せしめた元凶と指摘する声もある。そうした観点からも、減反の是非を選挙の争点にすることは有意義だっただけに残念である。
マニフェスト(政権公約)が当たり前になったこんにち、記載された施策が政党の性格を如実に示すことはいうまでもない。民主党がマニフェストの目玉として世襲制限、企業・団体献金廃止などを盛り込むのに対し、自民党の総選挙向けの目玉政策はいまだに見えてこない。麻生首相は、14兆円に及ぶ09年度補正予算の成果を国民が実感できる時期を待っているとされるが、総選挙は補正予算の成果を問うというだけのものではない。国の現状を見据え、何を、どう変えなければならないのかについて具体的に有権者に提示し、審判を受けるのが総選挙である。「バラマキ予算」をありがたく思え、という感覚を見る限り、自民党はなにも変わっていないということになる。
【秋月】
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