売り上げ確保か、エコ追求か
露呈したコンビ二経営のジレンマ
公正取引委員会は、コンビニエンスストアのセブンイレブン・ジャパンが加盟店に対し値引き販売を制限したとして、近く排除命令を出す方針を固めた。
今回の命令により、同社の法令違反が決定的となったわけだが、問題はそう簡単に済みそうもない。昨今の社会情勢から廃棄物を削減するエコロジーの推進は理解できるが、ただ、その履行にはコンビニのビジネスモデル崩壊や加盟店の収益悪化も絡んでくるからだ。
ここは冷静にそれぞれの問題点と解決策を考えてみたい。
<優越的地位の乱用は許されない>
コンビニの値引き問題については、公正取引委員会が2002年4月にフランチャイズ(FC)本部と加盟店の取り引きに関するガイドラインを改定している。
それによると、FC本部が加盟店に対し、正当な理由なしに品質が急速に低下する商品などの見切り販売を制限し、売れ残りとして廃棄することを余儀なくさせることを「優越的地位の乱用」に当たるとして、ガイドラインの遵守を求めている。
今回、公取が排除命令を出すことで、セブンイレブンの加盟店に対する値引き制限が「事実」ということになり、決して許されるものではない。
元来、同社はコンビニビジネスをFCシステムによって発展したと言っていいくらいの企業で、そこでは加盟店を大切にするという原理原則が貫かれてきた。
FC本部の収入は、加盟店のチャージ収入のみから得られるというシステム。それゆえ、スーパーバイザー(SV)が定期的に加盟店を指導し、売り上げをアップさせることが、ひいては本部の成長にもつながるという考えがあった。
FC契約上、本部と加盟店はあくまで対等で、本部が諸政策の実施について、加盟店へ一方的に命令することはできない。また、商品の発注権も店舗にあり、本部やSVがそれに対し、アドバイスはできても強制することは不可能だ。
<商品管理について見直す時期>
本部と加盟店が、相互に経営努力をすることで共存共栄につなげていく。これがコンビニのFCビジネスなのである。
そのために、本部は加盟店の利益を増やす仕組みや新たな顧客サービス、商品開発に労力を惜しまず、加盟店は地域のお客に愛される店舗を目指すために、適切な品揃えと正確な発注を行わなければならないのである。
今回の問題では、こうした双方の役割が重要になってくる。ただ、コンビニを取り巻く環境は厳しく、それが影響した面は否めない。
コンビニのFC契約には3タイプあるが、現在は本部が店舗を用意してオーナーを募集するケースが主流になっている。それは元々、商売をやってきたわけではないオーナーが増えているということで、経営指導上では問題が少なくない。
また、既存店の前年割れが続き、加盟店の売り上げが伸びない状況にある。そのなかで、弁当や総菜などの日配品の割合が4割にも達し、必然的に廃棄品も増えている。
コンビニを取り巻く環境は、本部や加盟店が商品管理について真剣に考えなければ、廃棄につながる可能性が高くなるという状況なのである。そして、これまでの商品管理のシステムに問題がないか。本部サイドは検証しなければならない時期に来ているようだ。
値引き販売の制限は許されないとの公取のお達しが、今後にどう影響するか |
【剱 英雄】
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