1円値引きというからくり
今回の問題の発端には、加盟店が行なった「1円値引き」がある。これは実際、お客に商品を1円で販売したのではなく、消費期限切れの商品を1円に売価変更して、会計処理したということだ。
どうしたのかというと、消費期限が来て廃棄せざるを得ない弁当などを、期限切れ寸前に1円に値引きして、加盟店が購入。それを廃棄し処理したのである。
なぜ、こんなことをしたのか。そこにはコンビニ独特の会計システム、「粗利益分配方式」がある。コンビニの場合、一般企業とは違い、売上総利益は「売上高-(売上原価-廃棄ロスや棚卸ロスの原価)」となっている。
例えば、売価100円、原価70円のおにぎりを10個仕入れ、7個売れて3個は廃棄したとする。ロイヤルティーを50%にすると、本部、加盟店とも105円の利益が入るが、店側は廃棄した商品の原価210円を負担しなければならないので、店の手取りは-105円になってしまう。
これに対し、廃棄商品の3個を1円に売価変更すると、売上高は700円+3円=703円。売上総利益は703円-700円=3円。利益は本部、加盟店とも1.5円だが、売り上げが立っているので、加盟店側に廃棄分の原価負担は生じないのである。
廃棄ロス低減の仕組みづくり
加盟店がこうした手法をとったのは、廃棄ロスの負担を店側だけに押し付けてきたコンビニ本部への抵抗とも受け取れる。
ただ、コンビニが粗利益分配方式の仕組みを作ったのは、30年も前。現在とは廃棄ロスを生じる弁当などの構成比が全く違う。ところが、年々廃棄ロスが出る日配商品の構成比が上がり、現在ではロスが発生するリスクは極めて高いと言わざるを得ない。
なのに本部と加盟店との間でのFC契約上、未だに粗利益分配のシステムは修正されていないところに、今回の問題が露呈したのである。
コンビニ本部は、とにかく売り上げを上げたいがために、廃棄ロスより機会ロス(お客が来店したときに欲しい商品がない)を重視してきた。POSレジや共同配送といった物流システムの導入もそのためだ。
しかし、商品の廃棄については、ずっと加盟店の負担にしてきたため、ロスを減少させる取り組みには、一切着手しないまま現在に至っている。
セブンイレブンは今やコンビニ業界に止まらず、小売業のトップとも言われているが、加盟店の廃棄商品も金額にするとダントツだ。だからこそ、業界のリーダーが率先して、廃棄ロスを抑える仕組みを考えていかなければならないと思う。
(つづく)
【剱 英雄】
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