福岡市における新型インフルエンザの感染が拡大している。医療機関からの遺伝子検査を拒否し、感染拡大を助長しながら謝りもせず、「冷静な対応」ばかりを呼びかける福岡市の姿勢は滑稽としか言いようがない。
世界保健機関(WHO)が世界的流行(パンデミック)を宣言し、警戒基準を「フェーズ6」に引き上げるなか、福岡市の対応は後手後手に回っている。毎日繰り返される記者会見では、ただ感染患者数と関連情報を垂れ流すだけだ。市の不作為が明らかとなってから、吉田宏市長は一度も会見に姿を現していない。都合が悪くなると姿を隠す姿勢には、政治家としての矜持も、市のトップとしての責任感も全くない。弱毒性だから騒ぐことはないと思っているとしたら、とんでもない話である。感染が拡大した場合、体力のないお年寄りや糖尿病などの持病を持っている市民は重症化する可能性が高いとされるからだ。少しでも弱者への配慮があれば、とにかく感染を拡大させないための方策をとるべきだが、市側の会見内容からはそうした決意は見えてこない。
福岡市は、感染拡大の責任を、福岡県が感染者第1号(外国人男性)の情報を明らかにしなかったからだとしているが、これはお門違いだ。今月6日に板付中の生徒が感染していることが判明する1週間も前から、地元の医療機関から遺伝子検査の要請があっていたことが明らかとなっている。海外渡航歴と新型インフル流行地への移動の有無にこだわって、医師の判断を無視したのは福岡市なのだ。県が情報提供を怠ったとすれば、それは別の問題であり、市が責任を免れるものでは決してない。もっとも重視すべきは現場の医師の判断なのだ。現に神戸での感染第1号は、現場の医師の判断により発見されている。しかも、感染した高校生には海外渡航歴がなかったにもかかわらず、福岡市のように行政側が遺伝子検査を拒否したりはしていない。
危機管理に対する方針は、事態に応じて、あくまでも自治体トップの意思で決めるべきものだ。北九州市の北橋市長は、関西圏での感染が明らかとなってからは、毅然とした態度で修学旅行まで中止させている。対して、吉田市長からは新型インフルエンザに対する明確な方針も決意も見えてこない。この差は一体何なのだろう。
吉田市政は、自己の面目ばかりを気にして、子どもやお年寄りの命を守ることをおろそかにしているとしか言いようがない。
【市政取材班】
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