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【倒産を追う】企業腐敗が招いた倒産 負の連鎖が破綻に追い込む(2)
特別取材
2009年6月17日 08:00

サンコー・テクノ

<企業の私物化が生む「負の連鎖」>

 売り上げが10億円を上回るようになると、手元にいくばくかのお金が残るようになる。そこで智寛社長は経理担当に言う。
 「経理の○○と××の個人名で銀行口座を開設し、そこに売り上げの一部を入れておくように」。  売り上げの改ざんである。ちなみにこの経理担当者は2名おり、1名は社長の親族で経理責任者。その名前でお金を…ということは、何がなされていたのかは言わずもがなである。さらに私物化は進む。
 この会社では株主総会、役員会を開く習慣がない。けれども、そんなことが可能なのだろうか。そもそも、この会社は前身である産興技研の倒産を見かねた材料仕入先の社長が大きく出資して立ち上がった会社のはず。出資者に対する説明義務を全うするためにも、株主総会は開かれねばならないのではないか。この問題に対して、智寛氏はアクロバティックな解決法を施す。株式の名義を、誰の許可も受けずに自分のものにしてしまったのだ。これにより名実ともに独裁体制が確立することとなった。
 誰からの監視も受けることがなくなり、役員報酬はお手盛り。当時の社長の給与は、少なくとも月150万円以上だったと見られている。
 落ちていく玉は、さらに速度を増してゆく。智寛氏自身が未集金の回収を行ない、持ち帰った現金をそのまま自分の机の引き出しに片付けてしまうことも、たびたびあったという。これは、見方によっては横領ともとられかねない所業であることは間違いない。
 このような状況下で、社員が一所懸命額に汗するはずがない。同社の主力商品である養魚装置は、販売区域が西日本全体と広い。それゆえ出張が多くなってしまうのも必定だ。監視されない環境がダラケを生み、社員たちは私用とも思える出張を組むようになる。追い討ちをかけるように、魚価が下落を始める。これがユーザーである養魚業者の体力を奪っていき、機械が売れなくなってしまった。経費ばかりがかさみ、利益を圧迫し始めた。
 その頃、公には売り上げのピークである20億を記録したことになっている。その上っ面の数値を外部に信じ込ませ、04年には政府系金融機関である日本政策投資銀行から無担保で5,000万円の融資を受けることができた。さらに西日本シティ銀行から、これも無担保で1億円の融資を引き出した。これらの資金は、新商品である環境設備機械の製造設備に充てられるはずだった。少なくとも銀行はそう思っていた。ところが実際は、社長が傾倒していた商品先物取引の損の穴埋めに使われていたのだ。表面上は高技術力・健全経営、中身はグチャグチャ。そんな実態が突然白日の下に晒される日がやってきた。07年、智寛氏が61歳の若さで急逝してしまったのだ。

~つづく~

【柳 茂嘉】

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