サンコー・テクノ
<あっけない幕引き>
前社長から事業を引き継いだのは弟の守氏だった。同氏は、兄弟のなかでは末弟にあたる四男。本来ならば、同じく経営に携わっていた次男が後継となってしかるべきなのだが、社員の反対や当人の思惑などがあり、しばらくの間社長不在の状態が続いた。業を煮やした銀行が代表者選定を催促し、四男の守氏の就任となったのだ。そもそも守氏は技術専門で、経営には携わってはいなかった。それが突然の就任で一変することになる。就任当初、決算書などから借入は4~5億円と踏んでいたのだが、どうもおかしい。借入名義の書き換えをしていると、明らかに知っていた額を上回っているのだ。その額、およそ10億円。
5億円ならば4、5年事業を継続していくうちに返済可能と考えていたのだが、10億となると話は違う。どう転んでも現状では立ち行かなくなると踏んだ。08年、大規模なリストラに踏み切ることを守氏は決断する。30余名の従業員を21名まで削減し、さらに残った従業員の給与もカット、役員報酬にいたっては6割カットすることにした。
それにより10億円あった借入をおよそ8億円にまで圧縮することに成功する。だが、まだまだ借入負担が重くのしかかる。そんななか、09年4月、とうとう銀行が態度を変えた。事業の今後より、今ある資産の押さえにかかったのだ。
銀行は社所有の土地、建物を売却させ、得た3,800万円を根こそぎ返済に充てさせた。守氏としては一部を会社に残してもらい、運転資金に充てて繁忙期である夏に向けての力を蓄えようという算段だったのだが、すべて回収されたことで状況が最悪となる。八方に手を尽くしたが5日、決済をすることができずに破産手続きをとることとなった。あっけない幕切れだった。
常識の範囲を超えた私物化が生んだ悲劇、それがこのサンコー・テクノの倒産劇なのである。
~了~
【柳 茂嘉】
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