昨日報じた、厚生労働省が5月22日に出した「通知」の一部「症例定義についてのQ&A(5月22日版)」をもう一度ご覧いただきたい。
「問2 医師が、新型インフルエンザを臨床的に強く疑ったときとは何か?」に対し、次のように記されている。
「インフルエンザ様の臨床症状(38℃以上の発熱又は急性呼吸器症状)、迅速診断キットの結果などを踏まえ、診察した医師が判断する。
なお、インフルエンザ迅速診断キットによって、A型陽性だった場合には、原則、擬似症患者の定義にあてはまり、保健所への連絡を要するものであるが、インフルエンザ迅速診断キットによってA型陰性B型陰性の場合やインフルエンザ迅速キットがない場合であっても、別添の資料(1、2)等を参考に医師が、強く疑った場合には、保健所への連絡を要する」
厚生労働省は症例定義を改定するにあたり、国内で感染が拡大する状況を踏まえて医師の診断を重視する方針に転換したものと見られる。特に届出規準について、簡易検査なしでも医師が新型インフルエンザを疑った場合には保健所への連絡を要する、としたことは、大きな意味を持つ。つまり、現場の医師に対して、「新型を疑った場合には保健所に届けろ」、と言っているのであり、そうなれば保健所が遺伝子検査を断るということは通知の真意を理解していないことになる。国は感染患者の早期発見、早期治療で拡大を抑える方針に転換しており、現場の医師がそれなりの理由で遺伝子検査を求めた場合、保健所は速やかに対応すべきである。しかし、博多保健所は複数回、これを拒否しているのである。
市側が遺伝子検査不実施の言い訳に使っている「厚生労働省の方針」とは、Q&Aの「問3」にもある「当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由」である。
市保健福祉局は、遺伝子検査を行なわなかった理由として、感染が報告されている地域(国内外)での滞在歴や新型インフルエンザ感染者との接触歴、周辺での発生状況などから判断して、遺伝子検査を行なうに足る理由がなかったからだとしているようだが、これはおかしい。「問3」の答えの(4)にあるように、新型を疑うに足る正当な理由には、もう一つ「他の疾患を強く疑われる場合でないこと・患者の周辺に、他の疾患が流行していない場合」というのが存在しているのだ。これは、「新型インフルエンザ以外に考えられない」という状況を指しており、この場合はまさに医療の現場での判断が重要視される。博多区のケースではこうしたことを勘案した上で遺伝子検査の要請がなされており、検査を拒否した保健所の態度は不作為というよりむしろ犯罪行為であったと言ったほうが妥当ともいえる。福岡市保健福祉局は、県や厚生労働省の方針が悪いかのように言ってきたが、これらは全て言い逃れに過ぎないばかりか、自らの行為を隠蔽するための便法だったのである。
つづく
市政取材班
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