福岡県内で新型インフルエンザへの感染が拡大するなか、気になっていることがある。それは、弱者への配慮に欠ける傾向があることである。特に教育現場には問題提起しておきたい。
福岡市内で初の感染者が確認されたのが今月6日。感染第1号は博多区板付中学の生徒だったが、それから同中学校区内の小・中学生に一気に感染が拡大した。しかし、13日、14日と市内の中学校・高校などではクラブ活動での対外試合や練習が休まず続けられていた。なぜこの時期くらい自粛しようという配慮が働かないのだろう。健康な生徒たちは回復も早いだろうが、そこから広がる先には持病を持つ市民やお年寄りが存在する。大げさにして社会生活を混乱させてはいけないという話と、弱者への配慮は全く別のものだろう。患者が増え、広範囲への感染が懸念される中、クラブ活動の責任者や学校側、そして教育委員会はもう少し真剣に考えるべきである。さらに踏み込んで言えば、社会生活の混乱がどうのということより、「人の命」の方が大切ではないのか!
若年層への感染がひとつの特徴となっていることを考えれば、自制の精神も大事だろう。自分さえ良ければいいということならスポーツをやる資格はない。そうしたことを教えることも大切なのではないか。市教委も独自に判断して指示を出すくらいのことをやるべきなのだが、市保健福祉局や同教委は、何かというと「厚生労働省の方針」を持ち出してくる。この問題について聞いた市教委の担当者も「厚生労働省も」と言い出した。クラブ活動の一部自粛程度で社会生活が混乱するとは思えない。
感染が拡大する福岡市にあっては独自の封じ込め策を講じるのは当然ではないだろうか。地方分権を叫びながら、都合の悪い時だけ「国の方針」を持ち出すことは能力のなさを証明しているようなものだ。
新型インフルエンザを弱毒性として軽く見る風潮があるが、それはしょせん自分の体力に当てはめての話である。感染したら重症化する恐れがある人たちのことを、少しでも考えるべきである。そうした配慮が地域社会での助け合いを育むのではないだろうか。大手マスコミを含め、社会全体にそうした視点を欠いていることに危機感を抱くのは筆者だけだろうか。
市政取材班
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