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東京レポート

大量消費と石油依存社会の終焉 GMの破綻で早まる電気自動車への転換(1)
東京レポート
2009年6月20日 08:00

 20世紀は石油と自動車の世紀だった。ゼネラル・モーターズ(GM)の破産は、石油依存社会の終焉を象徴する。GMは石油に依存した自動車王国を築きあげた覇者であったからだ。「GMの経営陣が燃費効率の悪い大型車の生産にのめり込み、日本のようにすぐれた中型・小型車の開発をしてこなかったツケ」という論調が大半だが、そんな皮相なものではない。

<GM中興の祖、スローン>
 「自動車はヨーロッパで生まれ、アメリカで産業となった」。自動車産業史家J.B.レイの有名な言葉である。
 自動車は1885年に、ドイツのカール・ベンツとゴットリーブ・ダイムラーが発明したというのが通説。ダイムラー・ベンツの創業者たちだ。だが、ヨーロッパでは自動車は値段にこだわらない上流階級層の乗り物に限られた。
 自動車はアメリカに渡り、大衆車時代を迎える。安い大衆車を提供したのは、いうまでもなくヘンリー・フォードである。1908年、フォードは「T型フォード」を発表。単純化と規格化による大量生産方式で、大衆自動車市場を創出した。低価格の大衆車を普及させたフォードは、20世紀初頭の自動車産業を制し、資本主義を制した。
 そのフォードに追いつき、追い越したのがGMである。
 GMは1908年、フォードがT型フォードを発表した年に、W.C.デュラントによって創設。合併に合併を重ねた寄り合い所帯だったためにお家騒動が絶えず、創業者のデュラントはその後追い出された。
 1923年、ピエール・デュポンの後ろ楯を得て社長に就いたのがA.P.スローン。GMの中興の祖と呼ばれる。マーケット理論のテキストに、必ず取り上げられる手法を発明した人物が、スローンその人だ。

<自動車を見かけで売る>
 T型フォードの普及で、アメリカには世界初のモータリゼーションが実現。T型フォードは、アメリカの道路という道路を埋め尽くした。しかし、1920年代に入って少しでも所得に余裕ができるようになると、中古のT型フォードの代わりに少しくらい価格が高くても新しいクルマに買い替えたいと思うのが人情である。
 スローンは市場動向に関して、天才的な洞察力をもっていた。自動車市場は買い替え需要の時代がやってくる。自動車は「見かけで売れる」時代になると見抜いたのだ。
 スローンは、「モデルチェンジと広告とクレジット」を組み合わせた手法で、クルマをファッション商品に変えた。買い替え需要を創出するため、キャデラックからシボレーまで、価格の異なる6車種を生産。毎年デザインを変えるモデルチェンジと宣伝で衆目を引きつけ、オートローンやクレジットで高額なブランド車を買えるようにした。
 一方、フォードは永年にわたってT型フォード1車種だけの生産を続けてきた。いつまでも使え、買い替える必要のない堅牢な実用車という技術者魂に忠実なあまり、マーケティングに目を向けていなかったわけだ。金融をつけて売るというクレジット商法を拒んだことも、フォードの劣勢に拍車をかけた。

~つづく~


【日下 淳】

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