23日、大阪府の橋下徹知事が、府教委が提唱する漢字や計算などの反復学習について、「やらないところの市長村長は選挙でどんどん落としてもらいたい」と発言したことが報じられている。多少の問題発言をしても、府民からの絶大な人気に守られる知事だけに、たかをくくっているのだろうが、これは勘違い発言としか言いようがない。首長が教育の内容までとやかく言い出せば、独裁と変わらない。教育委員会が知事や市長の部局と分けられ独立性が保たれているのは、そうした弊害を排除する目的からである。教育委員を任命するのは首長かもしれないが、各地域の教育現場で、橋下知事の意に沿わぬことが起こったからと言って、首長を選挙で落とせというのは間違いであろう。これではまるで独裁者の脅迫である。
「隂山メソッド」、「百ます計算」で知られる隂山英男立命館小学校副校長を教育委員に任命した橋下知事としては、反復学習実施校が100%に達しない現状に苛立ちを感じていたのだろう。しかし、それと首長選挙とは別の問題である。橋下知事の気に入らない首長が、知事の音頭取りで片端から落選させられてしまえば、大阪はまさに橋下独裁王国になる。そんなものは民主主義でも地方分権でもなんでもない。「反復学習をやらない市長村長を落選させなければ教育は変わらない」との趣旨の発言については、いっそう理解に苦しむ。
百ます計算など知らない世代にとっては「なんで反復学習がなければ教育が変わらないの?」というのが正直なところである。
国の直轄事業に対する負担金をめぐって問題提起をした橋下知事には拍手を送ってきたが、教育と首長選挙に関する発言は間違いだと申し上げておきたい。
【秋月】
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