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特別取材

シリーズ「保育」 永野繁登・福岡市保育協理事長に聞く(3)
特別取材
2009年6月25日 08:00

 ──福岡市の保育行政についてほかにご意見はありませんか?
永野繁登・福岡市保育協理事長
 永野 問題と感じているのは、子育て支援拠点事業をやっていないことです。この事業は子育て家庭を支援する職員を配置し、育児不安などについての指導、子育てサークルへの支援などを地域で行なうもので、全国では約7,000ケ所あります。その割合から考えると福岡市にも60カ所くらいはあってしかるべきなんですが、福岡市ではやっていないんですよ。広場事業を代わりにやっていると説明されるが、それは区単位であり、きめ細かに子育て支援に取り組むには不十分です。後ほど詳しく話しますが、地域で子育てを支える人や場所、つまりネットワークが求められています。

 ──保育士の就労状況に関してはどうでしょうか

 永野 延長保育に対する市の対応には不満です。延長保育は開所時間が11時間を越えるものですが、保育士の勤務は8時間単価で計算されています。要するに、延長すれば保育士の人数が足りないからで、延長保育にあたって自治体は保育士2人分(470万円)を補充すべきですが、15政令市で、福岡市だけがそれを出していない。市は交替勤務で対応すればいいというが、それでは市が制度の基準を満たさないことになります。台所事情はわかるが、対応すべきでしょう。

 ──夜間保育についてはどうですか

 永野 夜間保育は足りていません。夜に働く人には「保育」が求められています。認可保育の条文に「昼間に限らず」と要件を追加するだけでいい。無認可でも半分は基準を満たしているのなら、夜に働く親のために、手を差し伸べるべきではないでしょうか。

 ──先ほど子育て支援について何か話があると言われましたが?
           
 永野 沖縄に多良間村というところがあります。人口2000人に満たない村ですけど。そこの家庭は、いわゆる核家族ではありません。おじいちゃん、おばあちゃん、ひいおじいちゃんまでいるわけです。複合家族とでも言うんですかね。2番目が、地域のみんなが知り合いで、誰にでも、「お願いねっ」て頼んで買い物に行ける。3番目に、これが一番重要なんですが、「子ども社会」があるっていうことです。今、地域からは、そうしたものを全部なくそうとしていますよね。もうかなりなくなっているのかもしれませんが、それではいけないと思うんです。
 特に「子ども社会」は再生しなければならない。子ども達は、「子ども社会」の中で、人生の生き方を学んできました。例えば、ここ(玉川保育園)に中学生が来るんです。授業の一環として来るんですが、その中学生たちとはね、(保育園の)子どもがよく遊ぶんですよ。大人はやっぱり大人でしかない。子どもの中ではやっぱり違うんですよ。ですから「子ども社会」っていうのは絶対に必要なんです。「社会」ですよ。お兄ちゃんいて、そのずっと下の子まで。地域にいつも子どもたちがいて、いわゆるガキ大将がいて・・・。そういう世界をなくしてはいけないでしょう。
 我々は、この3つともなくしかけている。だから、なんとかしなければいけないんです。そのためには、地域も大事だし、保育園も大事ですよ。幼稚園にも協力してもらわないといけません。そうして子どもを育む環境を整える。子育て支援とは金をばら撒くことではなく、子どもが育つ環境を作り上げることではないんでしょうか。

 ──社会構造自体を変えていかないと、子育て支援はできないと。

 永野 そうですね。だから私は、保育園でやるのは子育て相談だけではだめだと言ってます。地域に子育てのネットワークを作っていきましょうと話しているんです。沖縄の多良間村のような地域社会に少しでも近づければいいなと・・・。

 ──園長を務める玉川保育園の特色は

 永野 認可保育園は、指針に則っているのでどこに行っても同じ。大きな違いはない。それが認可保育園です。

 ──最後になりましたが、保育に携わっていての喜びとは?

 永野 私自身が子どもたちに救われることがある。いろんな相手と議論して疲れきって園に帰ってきても、子どもに笑顔であいさつしてもらうと、心からほっとします。それが喜びということでしょうね。


■永野繁登氏 プロフィール■
東京大学農学部卒。財団法人日本農業コンサルタンツに勤務後、母親が経営していた永野福祉会玉川保育園を継いだ。現在、永野福祉会理事長、玉川保育園園長、福岡市保育協会長、日本保育協会理事などを務め、審議会などで厚生労働省や福岡市の保育行政に対して提言を行なっている。趣味はテニス。

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