トヨタ自動車に14年ぶりに創業家出身の社長が誕生した。豊田章男氏、53歳。社長、会長を経て名誉会長だった章一郎氏の長男である。その章男新社長がひそかに狙うのは、新たなる「製販分離」である。
「お客様に向いた活動」へ マーケティング会社設立
株主総会後の取締役会で新社長に就任したばかりの豊田章男氏と彼を支える5人の副社長のお披露目の記者会見が6月25日、都内で開かれた。2009年3月期に創業時以来となる71年ぶりの4,610億円の営業赤字に陥ったトヨタは、2010年3月期はそれを上回る8,500億円の営業赤字に陥る見通しだ。3期連続の赤字という事態だけは避けたいと、「8,000億円の固定費削減に少しでも上積みをして改善を図りたい」(章男氏)と一層のコスト低減を図るという。
だが、もちろん節約だけで乗り切れるはずはない。会見の中で章男氏が再三強調していたのは地域やマーケットの動向を反映した「売れるクルマづくり」。「このクルマは何万台売れ、利益はどれくらいなのか」という経理的な発想ではなく、「どのくらいの価格ならば喜んでいただけるか、どの地域ならば好まれるのか」というマーケティング的なセンスが重要というのだ。
そのために、国内販売強化をめざしてマーケティングに特化する新会社を設立する。章男氏は「広告やマーケティング活動を抜本的に見直します」と切り出し、「お客様に向いた活動に重点をおき、商品開発部門にもお客様の声を届けて、よりよい商品作りに生かしたい」と構想の一端を明らかにした。トヨタ社内で検討されている案によると、トヨタ本体の宣伝部門を分離し、トヨタグループの広告会社デルフィスなどと統合して来年1月にも新会社を設立。会長はトヨタ社長である章男氏が就く予定という。
(つづく)
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら