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公的資金注入を受けるエルピーダ 「国策会社」の虚しき断末魔(1)
ビジネス最前線
2009年6月20日 08:00

 半導体専業メーカーのエルピーダメモリに最大300億円の公的資金が出資される見通しになった。国による安易な救済は、本来退場すべき企業を延命させる「麻薬」とも言える。血税を無駄にしてはならない。

目的は天下りポスト死守
政投銀民営化棚上げ策

 全国紙各紙は6月19日、エルピーダが公的資金による資本増強を申請する方針と一斉に報じた。それによれば、改正された産業再生法に基づき、エルピーダが経済産業省に申請し、政府系金融機関の日本政策投資銀行を通じて最大300億円の出資と100億円の融資が行なわれる見通しという。
 経済産業省は昨秋のリーマン・ショック以降、一般の事業会社の経営が予期せぬ窮地に陥った際の緊急の対応策をまとめるため、この5月に産業再生法を改正した。眼目は、国(日本政策投資銀行)がカネを出して民間企業の株を買う点である。四半期決算の売上高が前年同期比で20%以上落ち込み、自己資本が同25%以上目減りしていること、なおかつ国内雇用が5,000人以上の会社であれば、認定要件を満たすとされた。この要件に照らして経済産業省が対象企業を認定する仕組みで、認定されると日本政策投資銀行が出資する。日本政策投資銀行はこの出資枠として2兆円を確保。出資がもし毀損した場合は、国によって最大8割まで補填される。
 一見、「危機対応策」に見えるが、霞が関での地盤沈下が著しい経済産業省が所管業界に影響力を行使したい思惑が透けて見える。これに日本政策投資銀行の民営化方針に抵抗してきた財務省が呼応し、制度ができあがった。日本政策投資銀行など政府系金融機関は財務省のOBの有力な天下り先だったが、小泉・竹中改革によって民営化が決まっていた。民営化されると、財務省は天下りポストを完全に失う恐れがあるため、今回の「100年に一度の経済危機」をこれ幸いと考え、民営化方針を一時棚上げしようと狙っているのだ。
 この「官の思惑」に見事に乗って第1号案件となりそうなエルピーダも、実は国策会社なのである。そもそも政府に忠実な民間企業なのだ。

巨額赤字垂れ流し続ける
国策DRAMメーカー

 「電子立国」ともてはやされた日本は1980年代~90年代にかけて半導体生産で世界を圧倒した。NECが世界最大の半導体メーカーとなり、三菱電機、日立製作所、東芝、富士通の大手5社が世界市場を席巻した。それによって、深刻な日米半導体摩擦を招来したことは記憶に新しい。とりわけ日本勢は、DRAMやフラッシュメモリーといったメモリー半導体に強かった。しかし盛者必衰の理ありで、メモリーを捨ててパソコン用のCPUに特化した米インテルが復活。韓国のサムスンがDRAMの量産をはじめると、大量出荷による市況の悪化に恒常的に見舞われるようになった。90年代の末には、覇権は日本勢から米国や韓国、台湾勢へと移っていった。

~つづく~


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