昨年7月、福岡市が国土交通省に提出した都市高速道路延伸の要望書に、「こども病院」の文字はなかった。
要望書の中で延伸が必要な理由として挙げられているのは、コンテナターミナルや青果市場、商業施設建設などにともなう交通量増加である。昨年7月といえば、こども病院人工島移転について、すでに患者家族や市民向け説明会が開催されていたころだ。移転方針が決定した後だけに、要望書の中でこども病院のことに触れてもよい時期だろうが、何も記されていない。この後、同省に対して提出された都市高速延伸の要望書などに、病院の人工島移転にともなう事情について記されていないか確認したが、今年2月に同省に提出された文書にも、こども病院の文字は見当たらなかった(参照)。
市側は、国交省に対して提出した都市高速道路延伸に関する文書は2種類しかないとしている。つまり、国に対しては、都市高速延伸について、人工島に移転するこども病院の交通アクセス問題解消のためという理由を提示していないことになる。都市高速を延伸しなければ、救急搬送時の子どもの命は保証されない。しかし、国に対して、「子どもの命が危ないから高速道路を延伸させてください」とは言えないということだろう。そんなことを言いだせば、こども病院の人工島移転が、いかに人命軽視の政策であるかが明らかになるからである。
昨日報じたように、都市高速延伸が実現したとして、全ての車両がその降り口を利用すれば、混雑することは自明の理。救急搬送に重大な支障を来たすことははっきりしている。低体重出生の場合、30分がその子どもの一生を決めるとまで言われるが、市内から人工島まで搬送するとしたら、距離的な問題に加え、混雑が予想されることで致命的な問題となる。
こども病院人工島移転を強行したうえ、何年か後にできる都市高速道路は、降り口でいつも混雑しているというのでは、あまりにもお粗末な話である。そのころ市長は変わっているはずだが、責任は誰が取るのだろう。