オリックスグループの解体が強まる。オリックス(梁瀬行雄社長)傘下の不動産会社、ジョイント・コーポレーション(東海林義信社長)は5月29日、東京地裁に会社更生法を申請した。負債総額は子会社と合わせ1,680億円。これを受けオリックスは、最大107億円の損失が発生する可能性があると発表した。ジョイントのM&A(合併・買収)からわずか9ヵ月。オリックスの大失態だ。
ジョイントの買収劇
「JAPAN」。昨年前半、証券市場に飛び交った危ない新興不動産会社の頭文字だ。筆頭の「J」はジョイント・コーポレーション。ジョイントは、土地付きのオフィスやマンションを仕込んで、再開発後にファンドに転売する不動産流動化事業で急成長してきた。だが、ミニバブルの崩壊で資金繰りに行き詰まった。
この時、M&Aに動いたのは、宮内義彦会長(73)率いるオリックス。昨年9月、ジョイントの第三者割当増を100億円で引き受け39.3%を出資、持分法適用会社に組み入れた。
米国発の金融不安の影響で、不動産に流れ込むマネーが急減。資金不足に陥った不動産ファンドや新興デベロッパーが不動産を手放し、地価の下落に拍車がかかった。オリックスはこれを好機到来と判断した。他社が買い姿勢を控えているいま、買いの攻勢に転じた。先んずれば人を制すである。
不動産市況は底値。不動産市況が持ち直して株価が回復した際に株を売却すれば、ハイリターンを得られる、というわけだ。だが、ジョイントはM&A9ヵ月で倒産。不動産市況の先行きに対する見方が、いかに甘かったかを露呈した。ジョイントへの出資時に付与した200億円の融資枠が使われていなかったのが、不幸中の幸いというべきだ。
信用不安強まる
オリックスの資金繰りに黄信号が点滅したのは、昨年9月のリーマン・ブラザーズの破綻に端を発する。金融危機が深刻化する最中に、リスクの大きいジョイントのM&Aを行なったことも、オリックスの信用不安につながった。
金融のプロたちの間での企業信用判定の有力なツールであるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の数値が、異常なまでに高騰した。
CDSとは、取引先の経営破綻や債務不履行による損失を肩代わりする保険商品の一種。取引先の信用度が低いと、プレミアムと呼ばれる数値も高くなり、保険会社などに支払う保証料も高くなる。
08年6月頃に、100ベーシスポイント(BP)だったCDS値は、09年3月17日には2137.50BPと異常な数値を示した。年率に換算すれば、21.37%。これは、100億円のオリックス向け債権を保有している金融機関は、年間21億3700万円の保証料を支払わないと、損失肩代わりのCDS契約を結べないという意味。
それまでは100BP、1億円程度の保証料でよかったのに、その20倍以上のプレミアムを上乗せしないとオリックスの債権を保証しないわけだ。金融のプロたちは、オリックスを破綻リスクが高いと判断したのである。
機関投資家など金融のプロたちにとって、オリックスの社債はあまりにもリスクが大きすぎて手を出せない、と判断しているのが、このCDS数値だ。オリックスの資金繰り難の大きな要因になった。最近のCDS値は550.00BP(5月29日)。以前ほどの異常な数値ではないが、それでも危険水域である400BPを上回る。
~つづく~
【日下 淳】
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