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特別取材

【トップインタビュー】(株)井筒屋 代表取締役 中村眞人氏(2)
特別取材
2009年6月11日 08:00

正念場に立つ老舗百貨店
北九州経済活性化のために

(株)井筒屋 代表取締役 中村 眞人 氏

他店舗の現状と課題

 ―山口井筒屋の状況はどうですか。

 中村 県庁所在地ということもあり、売上高85億円という高めの目標でした。しかし、実際の数字とはまだ10%近くの開きがあります。ただ、立地は良くて駐車場もついており、商店街もありますから、鳥取の大丸などに負けないくらいの規模でやれば利益は出るでしょう。

 ―博多リバレインのサロン・ド・井筒屋Uが6月いっぱいで撤退となります。そもそも出店の目的は。

 中村 もともと博多駅店が持っていたお客さまのうち、5,000~6,000人の方の受け皿として出店しました。また、地方の中心街には300坪単位の空き家がたくさんあるわけですが、ブランドをテナントに入れるビジネスは成り立ちません。ですから、少数のお客さまに対してゆっくりと商売できる業態を考えました。
 最初のころは地方から来たお客さまのウケも良かったのですが、取扱商品が高級品だったため、不況の波により途中で頭打ちになりました。もともと5年の定借でしたから、最終的に黒字になったとしても持たないだろうと判断したのです。

 ―当分は福岡にこだわらないということですね。ところで、コレット井筒屋の場所に他の大手百貨店が出店していたら、どうなっていたでしょうか。

 中村 井筒屋の存立自体が厳しくなっていたでしょう。そごうがあの場所で7~8年間ずっと右肩上がりが続いた一方で、当社は対前年比90%台の減収が続きました。新館を建てたおかげで増収に転じ、何とか100%超を維持できています。そのころから、そごうは売り上げが下がってきました。それが撤退につながったのです。
 高島屋や大丸だったら同じような状況になったでしょうが、伊勢丹ならばターゲットの客層も違うし、棲み分けできるだろうとも考えていました。

 ―その流れもあって、伊勢丹はそごうのマーケットを引き継ぐかたちで進出したわけですね。

 中村 当初、伊勢丹は売上目標値を約260億円に定めましたが、いざ進出すると約160億円にとどまってしまいました。

 ―伊勢丹が成功するほどのマーケットがなかったと。

 中村 というより、マーケット自体がなくなったということです。銀行・証券・保険などの金融センターが機能の統廃合で壊滅的になり、機能をまったく果たさなくなってしまった。そうして、主なターゲットとしていたOLやサラリーマンといったキャリア層がいなくなってしまったのです。
 そのときに気がついたのが、小倉駅を通過して通勤するキャリア層が数千人単位で激減していたことです。伊勢丹側と意見を出し合い、オフィス街が消えてしまったことが売上不振の最大要因だと判明したのです。

【文・構成:大根田康介】


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