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公取排除命令の是非を考える ~セブンイレブン編〔3〕
流通
2009年6月11日 11:38

廃棄防止に値引きは正当か

 今回の命令によって、加盟店は「値引き」を正当化されたことになる。しかし、それが最善策なのだろうか。値引きの本当の背景には、コンビニの経営環境の厳しさがあることも忘れてはならない。だから、値引き販売の是非は、別個に考えなければならない問題だ。
 先日、日本におけるコンビニの生みの親、(株)セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長がテレビ出演し、コンビニの革新経営について語っていた。大型スーパーが台頭した1970年代に、なぜコンビ二だったのか。
 導入の経緯を要約すれば、「利便性」「正価販売」「ストアロイヤルティー」の3つだ。それを30年以上かけて確立した(NHK「プロジェクトX」では、実にうまく解説されている)。それゆえ、コンビニに「安売り」はなじまないはずである。
 お客が求めるのは価格ではなく、今必要な商品であり、サービスであり、それを提供することが価値なのである。そのためにコンビニは24時間営業をはじめとする、さまざまなハード&ソフト整備に莫大な投資を行なっている。
 だから、社会的な風潮に乗って安易な安売りに走ることは、コンビニのストアロイヤルティーを損ないかねない。また、投資を速やかに回収するためにも、正価販売を行なうしかないのである。

値引き競争を激化させる危険性

 「値引きは現場を混乱させ、ルール無視を野放しにする」。現場からはこうした意見も聞かれる。(株)エブリワンの冨田晋社長は「もし値引きを認めれば、アルバイトが自分の好きな弁当やおにぎりが欠品しても店頭に補充せずにストックし、値段が下がってから購入することも考えられる」と警鐘を鳴らす。現場を知り尽くしているだけに説得力がある。
 コンビニは1日3回程度、商品入荷される。だとすると、値引きしたものとそうでないものが一緒に売場に並ぶかもしれない。この時、お客はどちらを購入するだろうか。
 社会一般では収入のアップが見込めず、節約ムードが漂う。しかも、エコ社会の流れが後押ししている。「まだ食べられるじゃないか」との思考からの結果は容易に想像がつく。
 オーナーが24時間、商品を管理できるなら、これらは監視できるかもしれない。しかし、そんなことは事実上不可能だ。だから、深夜や早朝にこうした問題が起こらないとも限らない。こうした対策には新たなマニュアル作りが必要になるし、これまで以上にオペレーションが複雑になり、運用に相当の時間がかかってしまう。
 出店競争の激化で、コンビニの商圏は縮小。こうした状況で値下げを認めれば、競合店は「ウチもしなければ生き残れない」と思うだろう。結果、値引き競争をエスカレートさせる危険性をはらんでいる。

(つづく)

【剱 英雄】

事実上、弁当類の値引きが認められたが、それはコンビニにとって福音にはならない


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