メディアにも及ぶ?政財界のパワーバランス
そんなT社が日本郵政から受注できたのはなぜか。そこに「チーム西川」のいかがわしさ、コンプライアンスの問題がある。それというのも横山氏は日本郵政専務に就任以来、東京・赤坂のさる料亭によく出入りするようになった。口の固い料亭とはいえ、常連客間で噂にならないわけがない。横山氏の料亭での振る舞いはともかく、問題は昨年初め、T社社長および同営業担当者が料亭女将の仲介で横山氏に挨拶していること。横山氏以下の郵政側出席者は、エレベーターの保守、管理の発注も扱う不動産部門スタッフだった。T社が広範囲に郵政の仕事を受注できたのはそれ以後である。
T社は料亭での横山専務以下の接待を認めたものの、郵政からの受注はあくまでも「競争入札」の結果だという。しかしその入札に当たっては、同社営業担当者が熊本にある九州エリアを統括するファシリティセンター、中・四国を統括する広島のファシリティセンターを訪ね、それぞれセンター長に挨拶している。何らかの便宜が図られていなければ一業者にできることではない。
実際、T社は料亭と「代理店契約はしていない」としつつも、女将の労に報いるかのように昨年から毎月数十万円を支払っている。「払う義務はないので止めたい」(T社社長)というものの、現在まで払い続けているのは借りがある証左だろう。
現在、T社福岡支店はE工業から同県古賀市のトラスト社本社に移し、点検責任者はトラスト社役員がT社社員として出向しているという。4月に福岡支店の電話番号を104で調べるとともに、住所確認すると「お客様の希望で福岡市東区までしか表示されていません」という妙な届け方をしていた。ちなみに電話すると、予想通り東京の本社に転送された。ちなみに「東区」はE工業の所在地である。今回改めて104に問い合わせると、電話番号は以前と同じながら、住所は「お客様の希望で表示できません」という。しかし、所在が依然として福岡市であることに変わりはない。念のためトラスト社本社のある古賀市でも調べてみたがT社の番号はない。福岡支店なるものはどこへ消えたのか。
料亭での横山専務にまつわるさまざまな話があるが、少なくともT社と接点をもち、同社が不適格な受注をしているのは事実。まさしく日本郵政のコンプライアンスの問題であり、「チーム西川」の実態解明が必要だが、なぜか大手マスコミに取り上げられることは少ない。鳩山辞任に繋がった政財界のパワーバランスがメディアにも及んでいるということか。
(了)
恩田 勝亘【おんだ・かつのぶ】
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。
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