6月19日、国土交通省はサムシング元代表の仲盛昭二氏に一通の通知を送付した。そこには「改正前の建築士法第10条第1項の規定に基づき、免許を取り消す」と記されていた。2005年11月に起こった姉歯秀次被告による構造計算書偽装問題の余波を受け、「第2の姉歯」と揶揄された仲盛氏が2年間もの裁判を余儀なくされたこの問題について、仲盛氏と国土交通省それぞれの言い分を掲載する。
仲盛昭二氏の言い分
Q:今回の措置についてどう思うか。
A:ひとつはっきり言えるのは、免許を取り消されるような理由はないということだ。
Q:このまま処分を受け入れるのか。
A:到底受け入れられない。文書に「処分に不服があるときは取り消しの訴えを提起できる」とあるから、その通りにするしかないだろう。私自身、「一級建築士」という資格に未練があるわけではない。しかし、ここで私が処分を甘んじて受け入れれば、住民の方や建築業界に与える影響は計り知れない。仕掛物件もすでに多数あるから、経済的大火を招くことにもなるだろう。行政側の行為はすべて「市民不在」で、「サムシングの仲盛」を構造設計から外すための目的にしか思えない。私は戦い続けるつもりだ。
Q:構造設計一級建築士資格を保有しているが、今後どうなるのか。
A:一級建築士と構造一級建築士との連動性については法の規定がないと理解している。今回の一級建築士としての処分が構造一級建築士の資格(一級建築士とは別の考査に合格している)に及ぶとは考えられない。したがって、構造設計一級建築士の業務に何ら支障をきたすものではない。
Q:行政の要請に対して、どのような姿勢だったか。
A:これまで、私は国土交通省や福岡市などの各行政機関に対して全面的に協力をしてきた。にも関わらず、今回不適切と判断された20件のうち、私が直接的に検証に関われたのは2件だけだった。また、私が持っているサムシングの物件に関するデータを提出するというかたちで協力を提案してきたが、行政にすべて拒絶された。
Q:構造計算書に何ら問題はないと。
A:まったく問題はない。唯一、福岡市がサムシング物件301件のうち1件が構造耐力不足と断定しているが、その根拠となる計算書の提出を求めたところ、未だに提出されていない。九州地方整備局の担当だった朝崎氏からも、福岡市に対して提出を求めたようだが。
Q:しかし、国交省は6月19日付けの仲盛氏宛ての文書で「差し替えにより、入力データ部分とこれとは別の入力データによる出力結果部分を合わせた、一貫性がなく再現性のない、不適切な構造計算書」と断定している。
A:それをいうなら、まずその計算書を審査した機関の責任能力を問うべきではないか。当時の基準では建築主事による建築確認の審査を通ったのに、あとで「ダメです」ということであれば、まずは福岡市の審査側とそれを監督する立場にある国交省が責任を明確にする必要があるだろう。
(つづく)
【大根田康介】
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