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アウトレットがもたらした功罪(1) 消費不況のなかで、その行方は
特別取材
2009年6月25日 12:02

 消費不況が叫ばれるなかで、順調に売り上げを伸ばしているアウトレット。日本に上陸した10年ほど前は安さや目新しさが際立ったが、今では正価業態を補佐するチャンネルとして有効活用されている。しかし、市場が成熟化するなかで、テナント集めの難しさやデベロッパーの運営手法で、新たな課題も生まれている。アウトレットの功罪とその行方を検証する。

1. アウトレットは在庫消化の「手段」

 アウトレットとは「出口」、「はけ口」を意味し、ブランドメーカーまたは小売業がサンプルや在庫品、B級品(キズもの)などのキャリー商品(持ち越し)を、格安で販売する業態をさす。これらが1カ所に結集した施設を「アウトレットモール」と呼んでいる。
 誕生したのは1980年代初頭の米国で、背景にはコスト優先の大量生産や大量仕入れがあった。ブランドメーカーや小売業は、1枚当たりのコストを低く抑えるため、生地の原反全部を使用して作り込んだり、商品をメーカーから多めに仕入れてしまう。当然、生地段階でキズがある商品や、レギュラー売場でさばききれない商品が発生する。
 アウトレットはこうした商品を最終処分して現金化し、メーカーや小売業のキャッシュフローを押し上げるために開発された業態である。
 つまり、そこには生産から卸し、小売り、さらに在庫処分とバーチカル(垂直)な消化システムがあり、安売りはあくまで「手段」であって「目的」ではない。それゆえ、本場米国では正価業態との競争を避けるために、50マイル(約80km)規制や70マイル(約110km)規制といった開発条件が設けられ、多くのアウトレットが大都市から離れた郊外に位置する。
 当然、お客は旅行気分で施設を訪れ、宝探し感覚で非日常の買い物を楽しむのである。

◎都市から車で1時間の超郊外が主流

 筆者が初めてアウトレットを取材したのは1993年。ニューヨークのマンハッタンから車で1時間の距離にある「ウッドベリーコモン・ファクトリー・アウトレッツ」を訪れた。
 ここは全米を代表するアウトレットの一つで、運営は日本で「プレミアムアウトレット」を展開するデベロッパーの「チェルシー」。5万m2を超える広大な敷地にグッチやカルバン・クラインといった高級ブランドから、ナイキやアディダスといったスポーツ用品、化粧品や雑貨、調味料、アウトドア用品まで、多くの「有名ブランド」が顔を揃えている。
 さらにレストランやミニ遊園地、銀行や教会も併設し、ニューヨーカーは旅行気分で非日常の買い物を楽しめ、レアなブランドを格安で手に入れることができる。
 ファクトリーアウトレット(工場直売)だけに、店舗はブランドメーカー中心の構成。各店が扱う商品は在庫品やB級品といったキャリー商品が主体で、有名ブランドが正価の30~90%オフと価格こそ魅力的だが、サイズや色柄はバラバラで、欠品も多い。商品陳列も一部の店を除けば雑然として、レギュラー売場のバーゲン状態さながらだ。
 じっくりとお値打ち品や掘り出し物を探すには1日の滞在では厳しく、それがリピーターづくりにも貢献するが、在庫処分業態である以上、商品にそれほどの期待はできない。
しかし、これが当時としてはアウトレット本来の姿だったのである。

(つづく)
米国デベロッパーのチェルシーが運営する「ウッドベリーコモン・ファクトリー・アウトレット」マンハッタンから車で1時間の超郊外にある

【剱 英雄】


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