18日の午後７時、天神からほど近い舞鶴公民館に住民が集まった。ホームレスの支援施設計画説明会とされていたが、思いがけない展開となった。
　
　説明会を開いたのは福岡市で不動産や小売業などを営んでいるという業者。以前からホームレス問題を意識しており、市のホームレス自立支援実施計画に賛同し、購入したビルと隣の行政の土地をあわせた土地で自立支援事業を行ないたいと考えていたという。
　「先代から大手門で（商売を）営んでいる企業ですが、那の津に買ったビルの隣の土地を調べたところ、行政の土地になっていまして、そこを使ってホームレスの自立支援をしたいと・・・」。説明をはじめた企業側だったが、途中で住民から一斉に反対の声が飛びかった。「なぜ、市は来てないんだ！」住民らの声に業者側は、市の担当課とも連絡は取り合っており、市は住民からある程度の理解があればやりたいと言っていると説明。今回は単独でお話しすることになったが、「住民の皆様に賛同いただけなければ、うちとしても無理にやりたいとは思っていません・・・」。言い終わるやいなや「反対に決まっている！」の声。すると企業は「では、辞めます！」。静まり返る室内に不可解な空気が流れる。まだ始まって何分かである。住民を説得する様子さえなく、あっけなく説明会は終わりを告げた。業者側が何度も繰り返す「ボランティアで」という言葉だけが耳に残った。
　
　翌日、今回の顛末についてホームレスの自立支援対策を所管する市保健福祉局保護課に話を聞いた。市の担当者は、説明会を開いた業者について、今年の３月ごろから５回ほど話をしたという。自立支援の施設を作りたいとの相談に始まり、２度目には、「ホームレス自立支援施設設置について」とする依頼文を提出している。依頼文には、「（施設計画のため）福岡市が所有する土地を買い受けたいので売却をお願いしたい」ということと「当施設運営上の福岡市の協力（施設の借り上げ、財政支援等）をお願いしたい」の２点が記されている。営利目的ではないと断りながら「ただし、経営（運営）的に成立することが前提」とも書かれている。公式に残された文書からは「ボランティア」の姿は浮かんでこないうえ、行政との共同事業というところまでは至っていなかったようだ。
　その後業者側からは６月18日の説明会前に、電話で「地域の方々と話をする」と報告があったが、結果がどうなったのか聞いていないという。
　市が集会に来なかった理由について尋ねると、「支援事業について説明したいが、住民からの要請がなければなかなか動けません。一緒に事業をすると決まったわけでもないので出向くことはありません」。市側の協力を匂わせていた業者側の話とは、かなり違うものがある。
　市が予定するホームレス支援施設の運営を委託する先は、専門性の高いNPOや社会福祉法人であり、公募によって選定する予定となっている。市民の安全を確保し、理解や成果を求めるには、難しい問題を含んでおり、営利目的の一般企業ではなく専門性の高い団体をと考えるのはやむを得ないという。当然のことだろう。

　地元住民にとっては青天の霹靂だったホームレス支援施設計画はあっけなく潰えたが、ホームレス問題の解決には光が見えてこない。

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