2. 関東・関西圏で競争が激化
日本でアウトレットモール開発が本格化したのは、筆者の取材から5年後の98年。三井不動産の「三井アウトレットパーク 横浜ベイサイド」あたりからだ。
次いで外資系デベロッパー・チェルシーの日本法人チェルシージャパンが2000年に「御殿場プレミアム・アウトレット」を開業。九州でも地元資本による「セキアヒルズ」や「マリノアシティ福岡」が次々と開発された。
90年代初頭には、大阪ガスグループのプラネットワークなどが開発した物件が登場しているが、その頃のアウトレットの多くが仕入れルートに頼る旧来型のファッションディスカウント店で、確立された流通チャンネルとしてのアウトレットとは似て非なるものだった。
ただ、当時は平成不況のただ中で、今のファストファッション同様、ワイドショーや情報番組が取り上げる「ブランド品の格安業態」といった話題が先行。在庫品の現金化やキャッシュフロー押し上げという、本来のビジネスシステムについて語られることは少なかったため、やむを得ない面はある。
それから10年、アウトレットは流通チャンネルで定位置を確保したかに見える。しかし、市場が成熟するなかで、デベロッパー、テナントにさまざまな課題が生じているのも事実だ。
一つは施設数の増加に伴う競争の激化である。その総数は全国で30数施設にも及ぶ。そのうち三井不動産、チェルシーとも8施設で、人口集積が高い関東・関西圏で計10施設を運営。今後もこの2強は首都圏の市場規模は大きいと、開発の手を緩めないという。
ただ、アウトレットは広域集客が売りもので、商圏を都市圏から高速道路で90分、人口600~1,800万人とすれば、施設間の商圏は重なり、競合激戦区となるのは間違いない。
◎小商圏展開は正価業態との競合を促す
「業績を公開しないことで有名な外資が売上高を公表!」。今年1月、チェルシージャパンは、御殿場プレミアム・アウトレットの08年売上高を531億円と発表し、業界関係者を驚かせた。これに他の7施設を加えると、同社の業績は1,600億円を有に超える。
一方、三井不動産は09年3月期に対前期比46%増の売上高1597億円。こちらも03年度が700億円であるから、着実に成長しているかのように見える。
しかし、既存施設の業績を見ると、大阪の鶴見は83億円で前期比1%減、横浜は155億円で同3%減、幕張は212億円で同1%減と、大都市圏で苦戦し始めている。
それを早めに悟ったのか、三井は昨年9月東北仙台に「三井アウトレットパーク仙台港」を開業。チェルシーも10月に「仙台泉プレミアム・アウトレット」をオープンした。
施設面積は三井が約2万m2で、チェルシーは1万m2で、既存施設の半分以下の規模。両社とも今後は小商圏を背景とした地方都市での展開がカギと見ており、その成功モデルにしたい考えのようだ。
ただ、それは広域商圏、大都市でのモデルが競争の影響を受け、集客やリピーター対策で手詰まり状態に陥っていることに他ならない。さらに仙台の施設にしても、JR仙台駅から車で30分の距離。こちらは確実に正価業態とも競合することになる。
【剱 英雄】
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