新型インフルエンザが、ようやく収まる気配を見せはじめた福岡市だが、29日の定例会見では、初動のミスについて吉田宏市長からは何の謝罪もなかった。謝罪どころか「他の機関との連携もうまくいった。それぞれの機関でベストを尽くした」とあきれた発言。博多保健所が医療機関からの遺伝子検査を拒否して感染拡大を許したことや、厚労省の「通知」を周知徹底しなかった事実については一言も触れようとしなかった。保健所の不作為は犯罪に等しいと考えるが、間違いだろうか。
市側が、医師らによる遺伝子検査要請を拒否した時点で、市長の言う『他の機関との連携』は崩壊している。遺伝子検査を拒否された医師からは「保健所との信頼関係は皆無になった」と、厳しい批判が出ているのである。
「経費がもったいない」として国の通知を医療機関に通知しなかったことは、ベストを尽くしたと言えるのだろうか。不作為を隠蔽する市保健福祉局の姿勢からは、市民の命を守るという信念は見えてこない。この連中こそ税金泥棒の典型である。
吉田市長の自画自賛がどこから来るものなのわからないが、あまりの厚顔さに「ひょっとして保健福祉局から本当の情報が上がっていないのではないか」との疑念を抱いてしまった。
取材を通じてはっきりしたことは、現在の保健福祉局のメンバーでは秋以降の第2波には対応できないということである。吉田市長に市民を守るという意思があるのなら、博多保健所の所長の処分、保健福祉局担当課の職員入れ替えを進言しておきたい。
気になることがもうひとつある。会見前日、副市長らがこども病院問題で福岡地検の事情聴取を受けたことに注目が集まり、新型インフルエンザで市側を追及する質問は出なかった。毎度の事ながら、大手マスコミの「検証力」のなさにはがっかりする。新型インフルエンザにおける市側の不作為を検証することは、次への重要な作業ではないのか。新聞各紙を見比べてきたが、行政の責任を明らかにした記事は数えるほどしかなかった。「県が悪い」との市側の発表を鵜呑みにして、感染者の数だけを垂れ流す報道のあり方にも怒りを覚える。
新型インフルエンザへの対応をめぐっては、まだまだ市側が隠蔽する事実が存在する。徹底的に検証することこそ、市民の安心・安全を守る道であることを明記しておきたい。
【市政取材班】
※記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら