吉田市政にまたしても重大な問題が浮上した。
福岡市が人工島に移転を決めている青果市場とこども病院。強い反対を振り切り、「はじめに人工島ありき」を貫いてきたが、移転を実現させるための最大の問題は「交通アクセス」である。
博多湾の中に位置する人工島への進入路は、わずかに3本の橋。市内側から人工島に渡る手段は2本の橋でしかない。住宅ならいざ知らず、こども病院や青果市場には、決して適地とは言えない。特に市内からの距離は致命的である。そこで登場したのが「都市高速を人工島内まで延伸する」という案である。これで全てが解決と思われていたが、都市高速延伸まで10年かかるとの話が飛び出した。事実なら青果市場移転が頓挫するだけでなく、子どもの命が守れないことになる。
いちはやく移転が決まっていた青果市場だが、市場関係者の話によれば「移転完了時には都市高速延伸も同時に実現させる、という約束だった」としたうえで、「そうでもしなければ移転反対の声を収めることはできなかった。市内で小さな店を営む人たちは絶対反対だった。あんな遠いところまで行けるはずがない。経費がかかって経営にならない。高齢の人たちにとっては『もう店を閉めろ』と言われたようなもの。実際、地域に根付いてきた古くからの店の多くが廃業を決めている。一部の市場関係者と政治家の利権になっているのではないか」。
つまり人工島移転の条件は「都市高延伸」だったということになる。
一方、こども病院人工島移転は、子どもの命が守れないとして大半の市民が反対している。低体重出生の場合、救急搬送に与えられた時間は30分。それを過ぎれば小さな命を守ることはできないとされる。急病の場合も同じである。こども病院への交通アクセスの問題に関し、吉田宏福岡市長は「都市高速を延伸する」と明言してきた。場当たり的な発言でしかなかったが、新病院開院と都市高延伸完了までのタイムラグについては、あまり大きく扱われてこなかった。高速道路にランプをひとつ建設する程度は簡単にできると思っている市民が多いせいもあるのだろう。
しかし、事はそう簡単ではなかった。
(つづく)
【市政取材班】
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