7. 資金調達に難、好物件も限られてくる
開発を進めるにしても、今後は資金調達の難しさが頭をもたげるだろう。特に資金面はチェルシーのような外資系デベロッパーにとって大きな問題だ。
米国では一般に、投資家がSCを投資の対象にしたり、開発物件を投資信託にして運用する手法をとるが、日本ではあくまで土地が担保となるので、日本での資金調達は難しいと言わざるを得ない。仮にできたとしても、これほど開発競争が激化すれば、担保価値の高い土地は、それほど残ってないはずである。また、インフラ整備にコストがかさむ日本では、店舗の粗利益率はどうしても米国より低くなるため、投資家は米国のような高い利回りを確保しづらい。だから、投資家からの資金調達がスムーズに進むとは到底思えない。
三井不動産にしても、敷金や保証金をなくし、出店も退店もしやすい条件を出しているようだが、そうなると開発コストを低く抑えなければならず、施設づくりや立地選定で魅力不足に陥る可能性は高い。
アウトレットを開発するには、大都市の近郊、高速道路のインター近くであるなどの条件が欠かせない。好条件の立地は少なくなってきており、課題は山積みだ。
◎有力テナントなしのアウトレットはじり貧に
最後にデベロッパーへアドバイスしよう。開発意欲が旺盛なことは結構だが、そのテナントとして期待される外資系企業は、アウトレットを出店するために日本に上陸したわけではないということを再認識するべきである。あくまでレギュラー店や卸先小売店の拡大が目的で、市場の拡大に比例した余剰在庫があってはじめて出店できる。それを無視したアウトレット出店などあり得ない。となると、今後、デベロッパー間での外資系テナントの争奪戦は必至で、テナント不足による国内ブランド誘致や、またそれらによる専用品販売がさらに進むはずだ。
アウトレットとしての価値に疑問符が付くのはもちろん、有力な核テナントなしに開業したアウトレットは、じり貧になりスラム化すると思われる。特に「300万人商圏での開発」などと謳っている物件は要注意だ。
有力な海外ブランドを持つアウトレットでも、そのブランドにとって魅力的な施設が開発されれば、新規出店の商品量確保ために既存店をスクラップする可能性が高い。テナントやデベロッパーは、従来の専門店やSCの開発・運営の概念を捨てるべきだ。
もはやアウトレットに高い収益性やテナントの販売力、魅力的な品揃えは期待できない。それほど、これからのアウトレット開発は難しいのである。
【剱 英雄】
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