いずれにせよ、アメリカのエネルギー業界においてはオバマ政権の緑のニューディール政策を機に新たなビジネスチャンスが得られることへの期待感が高まっている。「スマート・グリッド」と呼ばれる次世代の双方向送電網の拡充や各家庭や工場に設置しようとする「スマート・メーター」と呼ばれる代替エネルギーの検針メーターの普及計画などが目白押しである。スマート・グリッド開発が成功すれば、アメリカでは自動車5,300万台分の温室効果ガスが削減できるという。
こうしたオマバ政権が推し進めるニュービジネスのシナリオを描いているのは、ニューヨークの大手コンサル会社である。また、IBMやGEなども積極的にアイディアを売り込んでいる。要は、ウォールストリート発の金融危機で失った利益を取り戻すため、ニューヨークやワシントンのアイディア・ブローカーたちが知恵を絞った産物が「緑のニューディール」というわけだ。
とは言え、全米4,000万の家庭を新たな代替エネルギーから生まれる電力を供給するシステムで結ぼうとする計画には莫大なインフラ整備コストがかかるだけに、各地域の電力会社や個別の企業や家庭の財源を圧迫することは火を見るより明らかだ。政府の補助金や優遇税制が必要とされることも避けられそうにないのだが、そうした財源の出所はいまのところ確たる見通しがまったく立っていない。ここでも日本や中国の資金があてにされているフシが見られる。日本とすれば要注意である。
しかしながら、日本の環境エネルギー関連企業の中にも、このアメリカにおける緑のニューディール政策をビジネスチャンスとしてとらえる動きが見られるようになった。確かに、日本には太陽光、風力、地熱、第二世代バイオ燃料などアメリカが必要とする再生エネルギーに関する技術的蓄積がある。日本政府も経済産業省が中心となり官民上げての対米協力の仕掛けを作ろうとしている。
(つづく)
【浜田 和幸(はまだ かずゆき)略歴】
1953年鳥取県生まれ。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学大学院にて政治学博士号を修得。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現在、国際未来科学研究所の代表。
専門は「技術と社会の未来予測」「国家と個人の安全保障」「長寿企業の戦略経営」。米ワシントン・ロータリー・クラブ米日友好委員長、発明王エジソン生誕150周年祝賀事業実行委員長、日本バイオベンチャー推進協会理事、国連大学ミレニアム・プロジェクト委員、特許庁工業所有権副読本選定普及委員、鳥取県公園都市推進事業委員などを歴任。
主な著書:ベストセラーとなった「ヘッジファンド」(文春新書)をはじめ、「知的未来学入門」(新潮選書)、「快人エジソン」(日本経済新聞社)、「たかられる大国・日本」(祥伝社)、「サイバーテロ」(PHP)、「ブッシュの終わりなき世界戦争」(講談社)、「通貨バトルロワイアル」(集英社)、「チャイナ・コントロール」(祥伝社)、「ウォーター・マネー」(光文社)、「エジソンの言葉」(大和書房)、「イラク戦争:日本の分け前」(光文社)、「悪魔の情報戦争」(ビジネス社)、「黒いホワイトハウス」(祥伝社)、「ハゲタカが嗤った日:リップルウッド=新生銀行の隠された真実」(集英社インターナショナル)など多数。最新刊は、「たかられる大国・日本」(祥伝社・黄金文庫)、「胡錦濤の反日行動計画」(祥伝社)。また、毎週月曜日の午前9時10分から「山陰放送(BSS)」にて「浜田和幸の世界情報探検隊」、午後2時40分から「ニッポン放送・テリー伊藤のってけラジオ」にて「浜田和幸の世界びっくりニュース」をOA。毎週火曜日午前7時からは、「文化放送・蟹瀬誠一ネクスト」のレギュラー・コメンテーターとして最新ニュースの裏側を解説している。
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