組合員の減少
厳しい市場環境の影響で、管工事業界も苦境に立たされている。とくに近年はマンションへの需要があったものの、業界全体としての落ち込みの激しさは否めない。
とくに福岡市管工事では、出資者である組合員の減少に歯止めがかからない状況にある。
以前は、250の組合員を有していたが、09年3月期現在では153社。もちろん、企業淘汰で事業が継続できなくなったことで減ってゆく組合員もあるが、組合員として純然たるメリットを感じないことで脱退を決める組合員も少なくないという。
福岡市管工事の藤理事長は、「メリットを感じないほうがおかしい」と組合の優位性を強調している。たとえば、資材の一括購入によって小ロットで資材購入ができるという恩恵はもとより、福岡市管工事が公共工事を受注していることで、仕事が回ってくる。官庁などに提出する面倒な書類制作の代行を行なうなど、組合ならではのサービスも受けられる。だが、一部の業者は「すでに過去の遺物であり、メリットを感じられない。資材供給も現状不備はなく、管材業者も小分けしてもらうのでは加入しない」と組合への加入を否定する。
業績急降下
組合員の減少と市況の冷え込みが組み合わさることで、福岡市管工事は業績の低下を招いている。直近の業績を見れば一目瞭然である。07年3月期は約9億5,800万円の売上高を計上しているが、最近公開された09年3月期は約3億9,000万円と業績は急降下している。そのため、経常損益段階で348万円の赤字となり、当期損益段階では515万円の赤字を計上するに至った。もちろん、2億9,000万円の現金預金を保有しており、流動比率、当座比率ともに300%を越える。業績が落ち込んではいるものの、月商換算で約8.9カ月分を有しており、自己資本比率も80.62%と高い数字を維持している。長年、福岡市の管工事業界の下支えを行なってきただけに、財務面に関しては非常に固い基盤を持っている。
だが、問題は上述した業績の低迷。水道局サービス公社から委託を受けて、365日・24時間対応で家庭での水漏れや水道機器の故障などの修繕サービスを行なう「メンテナンスセンター」を立ち上げ、18社で対応するなど資材販売以外の事業の柱として育成に力を注いでいる。しかし、現状は大きく事業展開を行なうまでに至っていない。藤理事長は「組合は大きく儲けを出す事業体ではない」としながらも、「現状維持のために新事業の展開を模索している最中」とコメントしており、今後の業績安定の秘策が気になるところである。
【道山 憲一】
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