<「年間80万戸時代」への突入>
こうした時代背景を基にすると、今後の住宅はどうあるべきなのであろうか?
耐震性、長期耐久性能、環境問題適応など課題は数々あるが、所得の伸びが逆流して減少に移ってくるなかで『良かろう、高かろう』の住宅はほんの一握りの需要層にしか受け入れられないのではなかろうか。
ドイツなどはオーク材を用いた木造住宅で300~400年間も実用に供した物件が多数ある。1階はブティック等のショップに、2~3階は住居にという住まい方をしている。数十年に1階外壁を取り外し、湿気が溜まりやすく腐りやすい部分にはオイルを塗りこむ。断熱材を高性能なものに取り替えて結露と暖房性能を確保し、再び以前の外壁材を貼り直して街並みを保存している。
日本の住宅もそうあるべきだとして、矢継ぎ早にいくつかの住宅関連法案を通してきたが、問題は国土交通省、学会、大手住宅メーカーだけで内容を決定してしまい、工業化認定住宅メーカーだけを利する形になってしまっていることだ。
そうした環境下で、地域に密着して地場工務店が造る住宅の高品質化に勤めてきた木材プレカット加工業者が、この急激な需要減少から存続の岐路に立たされて言う。
月産1,500坪程度のいわゆる1ラインメーカーは、需要減少から受注が1,000坪とか800坪程度まで稼働率が落ち、逆のコストアップに悩んでいる。これからは生死をかけたサバイバルゲームが始まるのに価格競争力を急激に失っていきつつある。
一方で、いち早くプレカット加工に取り組み、ある時期に高収益を上げつつ設備更新を行なって、そのうえ設備投資を含めた借入金返済も行なって財務体質を強化してきた企業は強い。
ヤマエ久野、市岡、キューハウ、原田木材などが今後強みを発揮してくるであろう。
とにもかくにも、既に木材・建材業界においてプレカット加工なしには生きていけない状況になってしまっている。これからはサッシや住宅設備機器を加えた総合物流機能と、構造計算業務をプレカット加工工場が担う時代を迎えるのである。
上に挙げた4社以外に中国木材や、すてきナイスグループがどういう動きを見せるかが注目される。いよいよ、年間80万戸時代に突入である。
【徳島 盛】
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