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<副島隆彦の「学問道場」>国家戦略論の背景 21世紀の日本を考える(1)
特別取材
2009年7月14日 15:54

世界は、少なくとも今後100年ぐらいは、民族・宗教・人種の違いを超えることはできない。だから、21世紀になったからといって「世界市民主義者による、世界連邦の運営」などという政治体制が実現するとは考えられない。国民国家(ネイション・ステイト)と、主権国家(ソブランティ)という考えは、まだ当分は死なないのだ。人類は、当分は、「国家が世界を割拠している」下で生きていくしかない。もちろん、日本だけが勝手に、世界の現実、すなわち国家と国家の利害のぶつかり合いを中心として動いている現在の世界を廃止に向かわせる、などと考えるのは相当におかしい。あくまで、日本の置かれている現実を前提として、論を進めていくべきである。

<日本の歴史>
 21世紀の日本を考えるにあたっては、まず、この国の現状を精確に見極めなければならない。
そのためには、今日にまで至った歴史を、冷静に振り返る必要がある。
 日本は古代以来、1850年代まで中国の属国であった。
 断っておくが、属国というのは植民地(コロニー)のことではない。歴史上の類推でいえば、紀元前後の世界帝国であったローマの属州(プロヴァキア)のことである。支那歴代王朝(中華帝国)の用語でいえば、藩国あるいは冊封国という。  冊封国の支配者たちは、中国の歴代皇帝に朝見して、臣下の礼をとった。彼ら属国の支配者たちを、皇帝に対して、「王」あるいは「国王」という。
 たとえば、室町時代に足利幕府の武家政権は、明王朝から「日本国王」の称号を頂戴していた。中国から見れば日本は属国同様であったが、一方で日本はこの事実に激しく反発を感じて抵抗してきた国である。日本の天皇は、古代から一貫して、支那の皇帝の権威を否認し続けてきた。
 1853年の黒船来航によって、米国インド洋艦隊の提督マシュー・カルブレイス・ペリーの砲艦外交(ガンボート・ポリシー)で、無理やり鎖国をこじあけられ開国してからは、米国(もしくは英国)に軍事的、経済的、文化的に服属してきた。
 シー・エムパイア(海洋帝国)としての米国と友好関係を築き続けたことは、日本の近代化にとっては幸運であった。
 ところが、日露戦争から大東亜戦争敗戦までの間に、国家に対する求心力が高まってくると、日本は西欧諸国と米国に対して反抗的になり、東アジアにおける独自の地域覇権(リージョナル・ヘジェモニー)確立を目指し、すなわち「大東亜共栄圏」構想を打ち出し、世界のほとんどを敵に回して戦いを挑み、そして敗北する。
 その後日本は、米国の、ソビエト・中国の共産主義に対する「反共の防波堤」としての役割を東アジアで担い、東西冷戦の狭間で「吉田ドクトリン」により軍事負担を免れ、上手に行動して、経済的繁栄を勝ち得た。

(つづく)

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