福岡市が進める人工島事業にとって最大の問題は交通アクセス。現在は人工島の近くに都市高速・香椎浜ランプがあるが、青果市場やこども病院、人工島中央ゾーンの商業施設が建設されれば、たちまち交通渋滞を引き起こすことが予想される。解決策は人工島内への都市高速延伸しかないのだが、ことは簡単ではない。
福岡北九州高速道路公社(以下、高速公社)の関係者は次のように話す。「『都市高速』と言われるが、アイランドシティ(人工島)への延伸は公社がやると決まったわけではない。正確にいうなら自動車専用道路ですよ。事業主体が決まっていないんですから。公社にやれという指示はないんです。つまり、計画段階。正式スタートでもなんでもない。幹線道路協議会のテーブルに乗っているわけでもないですし、環境アセスも必要。段階ごとに、それぞれ決められた年数がかかることになる。まぁ通常、計画から10年と言われますから、青果市場やこども病院には間に合いません。公社としては動いていないということです」
都市高速延伸には、計画段階から環境アセス、市・県・国に前出の高速公社などをもって構成される幹線道路協議会での議論、そして都市計画決定と手順が定められている。無秩序な公共事業はそうしてコントロールされているのだ。
しかし、人工島への都市高速延伸については環境アセス実施の予定も立っておらず、幹線道路協議会でのテーブルにも乗っていない。なにより、事業主体と見られていた高速公社が動いていないことは致命傷なのである。
高速公社の理事長は県知事の任命によって決まる。つまり、麻生知事の影響力が強いため、知事がゴーサインを出さない限り計画は進まないということ。事業費は、福岡市だけでなく県も同額を支出することになり、建設に向けての大義名分や裏付けとなるデータは必須である。現時点で交通量調査も環境アセスも揃っていない以上、計画が大幅に遅れていることを意味する。県として計画を進める環境が整っていないのである。
事業主体を決め、計画を進めるためには、市と県の協力関係が必要。しかし、吉田福岡市長と麻生知事は空港問題でギクシャクして以来、関係が冷え切っていると言われる。県としても数十億円規模の多額の支出を要する都市高速延伸には、慎重にならざるを得ないのである。市の試算では200~300億円とされる事業費についても、専門家は300~400億円が妥当と断言する。都市高速延伸に10年と報じてきたが、実際には何年かかるか分からないとの見方もある。確かなことは「計画から10年」という事実だけだ。
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